〜gravity OFF 05〜
5.鍵
指と指が触れ合う…と、また下降するシゲの躯。
そんなに高く上がってなかったから着地してもどこも痛めてなさそうだ。
思わず顔を見合わせる。
「「…」」
シゲの視線に促されて手首を握ってる掌を少しずつ開いていく。
オレの指先がシゲから離れたその瞬間シゲが顔を歪めた。
「あかん…また浮くわ。なんでやろ」
素早く腕を掴んで重力のある世界に。
「オレと触れてると浮かないんだ?」
「………どうやらそうみたいやな」
なんで?と首を傾げるシゲ。
「詳しい事はわかんねぇけどさ、良かったじゃん。とりあえず」
降りられたんだし。
「…うーん」
理屈っぽいこの人は今一歩納得がいかないみたい…だけど、とりあえず打開策を見つけ
たって考えたら?ってオレの言葉に考えるのを強制終了させたらしかった…けど、まだ
やっぱりなんだかぶつぶつ言ってる。
「『鍵』は体温なんやろか、それとも…ぐっさん個人?」
「どっちだろうね。今この場にはオレしかいないし…後で試してみれば?」
シゲにしたら大問題なんだろうけど、とりあえず『オレが鍵』ってのは確かみたいなん
だしそれでいいじゃん。
「そうやな。でも…」
まだ眉間に皺が寄ってるシゲの肩に手を乗せたまま部屋に視線を走らせたオレは壁の時
計に目を留めた。
「…シゲ、いくらでも考えんのに付き合うからさ、先移動しようぜ。メンバーより先に
入った方がよくねぇ?」
「…もうそんな時間?そうやね、いきなりびっくりさせんのもなんやし…ぁ、ギター」
「ギター、はわかるけどさ、それはスタジオで…にしときなよ。それよりその格好のま
んま行くつもり?」
「………うん、そないするわ。けどやあ着替えすらひとりででけへんなんて…ぐっさん
ごめんなぁ」
ごそごそもぞもぞ着替えてるあの人の肩に手を置いてオレはこれからのスケジュールを
脳裏に思い描いていた。ライブ開始まであと一か月ちょい。それまでにこの症状は変化
するんだろうか?…ていうか明日起きたら全部元通りで俺らがふたりして白中夢を見て
た、なんてオチはねぇよな?
シゲが支度を終え『おまたせ〜やまぐち?やまぐち、て』と声をかけて来るまで俺は今
迄の危うさに更にもう一項目書き加えたシゲとこれからの俺達の事を考えていた。
都内某所スタジオ。ここまではシゲが運転してる俺の腕に掴まる事でなんとかクリア。
ラッキーなことにまだメンバーは俺等しか来てない。
「なあぐっさんギター取ってくれへん?」
スタジオに落ち着いての第一声がそれ。そりゃシゲが『シゲ』である限りギターと縁が
切れる事なんてないのはわかってるけど原因究明より対応策協議よりギターなんだ…そ
う思いながらギターケースから取り出す。
「やって…ギター弾かれへんかったら大変やん、もうすぐツアーやのに」
俺の表情を読んだシゲが繰り出した言葉はたしかに至極真っ当だ。俺は黙ってシゲの手
にギターを握らせ、邪魔にならずにホールドできるポジションを探った。
ジャーン…部屋にCの音が満ちる。
つづいてG、Am、F…………。
シゲがぱぁーっと笑顔になった。
***
いったいいつ以来だよ!と自分で突っ込んでしまいました; …えー、前回アップしたのが6月で今は……9月(滝汗)軽く細かい設定を忘れてたり。
つづき、どんな流れにすればいいんだろう………。
良ければ拍手等でご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!
  
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