〜gravity OFF 06〜

6.模索


「良かったー弾けるわー…」

じゃあぐっさん手ぇ放して見て?
その言葉に左肩に乗せてた掌を小指から一本ずつ浮かせて行く。

小指薬指中指………親指…………………………人差し指。

人差し指が離れた時にシゲの背中がびくりと揺れた。



1、2、3、4、5…こっちを向いたシゲと思わず顔を見合わせ息を詰め心の中でカウ
ントする。




シゲの破顔が深くなった。

「なんでやろ?…でも良かった〜!」

心底安堵した表情。どうやら『鍵』がもうひとつ見つかったようだ。ご機嫌でギターを
掻き鳴らすその表情にこっちの顔もつられて綻んだ。

俺が四六時中隣にいられればいいけどなかなかそれは現実問題として難しい。
それに良く考えたらもうすぐライブだ。ライブの時にはふたりとも両手は楽器で塞がっ
てるし、いくらなんでもライブ中ずっと背中合わせのポジションでって訳にもいかない
だろうし………………………俺は良いとしても額に青筋浮かべてる太一や涙目になって
そうな松岡の顔が脳裏に浮かぶ。想像の余地の入り込む隙間すらない確定的ヴィジョン。


考えてみたら今は『どちらかがどちらかに触れる』って形でクリアできてたけど、いつ
までこのままなのか、今後の仕事、対処法…そもそも根本的に原因に心当たりはあるの
か。他のメンバーでも重力の枷に戻してやれるのか…………確かめること、考えなきゃ
いけないことは山ほどあった。




「………………?」


いつの間にか音が止んでる。目を向けるとシゲが恐る恐る…そう表現すんのがぴったり
な表情でギターを傍らに立て掛けるところ。

ギターから手を放すと…………ぁ、また慌ててネックに手を伸ばした。



はぁーーーーーーー。
体中の息を全部吐き出したかのような溜め息。見守ってるこっちにも落胆が伝染するく
らい。



「し、シゲ…」



でも、顔をあげたシゲはちいさくだけど笑みを浮かべてた。

「そんなにうまあはいかへんか……とりあえず『鍵』がふたつ見つかったってだけでも
前進やんな。とりあえずギターかやまぐちが傍にあったら浮かへんってわかったんやし」


「『あったら』って、あなたねぇ…」

『俺はギターと同列か?』そう思ったけどとりあえず突っ込みは心の中だけにとどめた。
シゲにとってギターと同列ってのは最高待遇ってのともしかしたら同じなのかもしれな
いし。


目覚めると同時に襲った非常事態に朝から飲まず食わずだというシゲとひとまずコーヒー
ブレイク。浮遊感で食欲はないらしい。乗り物酔いの一歩手前、そんな表情。ギターを
抱いたままパイプイスに座り紙コップをくわえながら脱力中……………無理もないけど。

そんなシゲを尻目にオレはいろいろ実験してみた。ぎゅっと手を握ってなくても指先が
触れるだけで大丈夫なのはわかったけど、足先は…とOK。じゃあ髪の毛は…。

「なぁ」

シゲの硬い声。

「んー?」

わざと軽い調子で答える。

「みんなにどない言うたらええんかなぁ…」

って言うか、これほんまに現実やんな?

「ふたり一緒に一緒の夢みてるんならわかんないけど」

「はぁ…」

がっくり方を落とすシゲ。もしかして俺に否定して欲しかったの?

「言わん訳にはいかんよなぁ」

「そーだねぇ」

パイプイスを引き摺って隣に座りシゲの肩に手を置く。心細いだろうけどさ、貴方は独
りじゃないでしょ…ぽてり、シゲが寄りかかってきた。『はぁー』背中越し伝わる振動。

「でもさ、とりあえず明日にしねぇ?未だに半信半疑だもん、俺。目の前で見たけど、
見てるけどまだシゲと一緒に『おんなじ夢』見てる気もするし」

今晩は俺もシゲん家に泊めて貰うし…そしたらなにかあってもどうにかなるしさ。
明日も今日と同じで一日スタジオでしょ?あいつらも。だから、明日。


「……………」

なんとも言えない顔で考え込んでるシゲに付け加える。

「一晩寝たら、ってこともないとも言い切れないし。それにシゲも、それから俺だって
まだ自分が目一杯パニクってる状態じゃん、この状態のまんまでちゃんと説明できる?」

「そやなぁ……」

頭の中でいろんなことが渦巻いてるんだろう。

「……………………………………………………」

シゲが姿勢を正した。覚悟を決めたようだ。


「………うん、そやな。そないするわ。とりあえず今日はギターがあったら乗り切れる
ハズやしな」
「俺もいるって」

『フォローはまっかせなさい』俺様口調で言うとシゲはやっとちょっと肩の力が抜けた
ように笑った。

なんか変なことに巻き込んでもうてごめんなぁ……なんて、すまなさそうな目で謝らな
くていいって。こんな時に役に立ててこその『相棒』でしょうが。
『呼ばれた』ってことは『必要とされてる』ってことで、それはすげえ嬉しいから…す
くなくとも独りでパニクってられるよりずっといいから。『一蓮托生』なんだからさ、
俺達。




あ、コンソールブースの向こうに松岡。
つんと袖を引いて教えると、気付いたシゲの顔が『リーダーの表情』になった。

俺は今日、シゲのすぐ横を立ち位置にする事を勝手に決めて松岡を迎え撃つ体勢を整え
る。(や、別に敵じゃないんだけどさ…気分的に)

シゲと俺のスリリングな一日はその夜日付が変わる頃までつづいた。


to be continued...



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ほんとに間隔開きすぎですね。すみません;


良ければ拍手等でご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。 お読みいただきありがとうございました!










































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