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--an illusion of the Sahara(Desert)-- ジリリリリリ……… タイムアップを告げる時計のベル音が砂漠に吸い込まれていく。 世間が認識してる『リーダー』のイメージに相応しい動きでラストカット。僕は砂漠の ど真ん中、砂丘のてっぺんで今のんびり独り寝転んでいた。 自分の周囲ほぼ360°ぐるりに広がる地平線。遮るものひとつない空は蒼過ぎて緑が かって見える。温暖化の影響で砂漠が周りの土地を浸食したり上空にばかでかいオゾン ホールが開いたりしてるんだってたしか飛行機で斜め読みした何冊かの本に書いてあっ たっけ。 時間の加減か体感温度はイメージより低く砂もそんなに熱を孕んではいない…まあこれ は旅の途中頂いたこの民族衣装のおかげでもあるけれど。 目を閉じ瞼を透かして感じる太陽。 この大地に『ただ独り』を感じる束の間。 日々の仕事に追われてることが『虚』で今こそが『実』だ、とこころの底のどこかから 声がする。 はあ〜 思わず深呼吸。 吸い込む乾いた大気、風が吹くたび目を細める……収録が終わった時点でコンタクトを 諦めメガネにして大正解。 人の手が加わったモノが視覚にも聴覚にも一切触れない、今の生活と真逆の景色。 僕を追いかけるのに忙しくて周囲の風景のスケールを伝える映像を押さえていなかった と慌てるスタッフを 『ここで待ってるから』 『どこにも行かないで下さいよ〜』 『いかへんって』 『ホントにホントですね?』 そんなやりとりと共に送りだしたのはつい30分ほど前。 振り返り僕がここにいることを何度も何度も確認しながら進んでいくクルーにクスクス 笑いが零れる。いつものクセで目をかばう自分にとってほんとは砂だらけの環境は『危 険地帯』そのものなのだけれど今はそれも気にならなかった。 「僕、そんな信用ありません?」 そう聞いたらクルーから返ってきた言葉。 『突拍子もない、って言葉がほんと一番似合う人だから』 『実は方向音痴なんすよ、凄く』 『糸の切れた凧みたいにふらふら飛んでっちゃいそうでしょ』 『無理も無茶も自覚あり、でも見せない人だから』 『だからリーダーから目を離すな!』 それが彼らに与えられた裏ミッションだったらしい。 「みなさん目がマジだったんです。あんな怖い笑顔久々に見ました…。だからどうかそ こを動かないで下さいね、リーダー」 必死な顔、懇願口調でそう言い残したディレクター。 『なんでそんなにサハラにこだわんのさ?』 不思議そうな顔に『砂漠にただ独り、これぞ男のロマンや!』そう力説したらあきれて たのに、みんな。 「いったい僕をいくつの子や思てんのやろ、あいつら」 齢35になろう言うおっちゃんやで…僕。悪態をつきながらも零れる笑み。 グループ割りで独りになることになった僕をそう言えばずっと心配してくれてたっけ。 ********** 『あんたハラ弱いんだしさ、生水のんじゃ駄目よ!自己管理してよね、いないんだから 俺等。それと…なんでひとりだけ帽子持って来てないの!?あんたの行き先は熱砂の砂 漠でしょうが!』 これなにかと役立つから。その言葉と共に手渡されたのは松岡厳選のコンパクトな『常 備薬パック』と彼がステージで愛用してる紫のバスタオル。 『もしも迷ったら大きな声で俺ら呼んで下さいね?そしたら絶対助けにいきますから』 そう言って抱きついてきた末っ子は右手首からいつも愛用してるリストバンドを外して 手渡してくれた。 『どうして『独りで砂漠』を目指すかな。こんなシチュエーションで。リーダーあんた もしかして馬鹿?』 辛辣なキツい口調で『冒険ならどんな話にでも相棒がいんじゃん!なんで今回村長すら 連れ来てないのさ』と続けた太一が放って寄越したのは太一が10周年の時にデザイン したTOKIOベア…それもご丁寧に僕のを除いた4体。 そしてどっしり構えてるように見えてその実誰より心配性なあいつ。 『どうして5人を2・2・1になんかに分けんだよ、2・3でいいのに。シゲのボケは 拾って貰ってなんぼ、じゃんか!』 いや、僕ら本職はとりあえずアイドルやから芸人さん違ゃうし。 さりげに失礼な台詞を吐いてる山口。 心配が高じて怒ってるその目に言い聞かせるように大丈夫と何度も繰り返すとあいつは 大きくひとつ溜め息をついて目の前で自分の左耳からピアスをひとつ外し僕の目の前に 翳した……『仕方ねぇ』とぶつぶつぼやきながら。 『紫のバスタオルにリストバンド、太一のクマと俺のピアス。せめて同じ景色を一緒に 見せてやってよ』 俺らの代わりに…背後に回って僕の耳の塞がりかけたピアスホールにピアスを通しなが ら山口が囁いた言葉。 みつめる4対の瞳に頷いた。
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