--研究室へようこそ--



             09 困惑と熱弁と







多難そうな先行きに背中を一筋つぅーっと汗が伝った。

「お前も趣意書とか読んだやろ、そんなコンセプトとちゃうかったやん」

難しい顔の山口さん(この人も先生なんだよな)に城島先生がとりなすように言ってく
れる。

「…だけどさ、見かけまっとうそうな企画だったのにいざ動き出してから化けの皮はが
れた企画も結構あったじゃん」

「そりゃそうやけど。
…けど、そう言われて考えたらなんや不思議やね。
なんでよりによってこんな若輩モンのやってる研究室を選ばはったんです?」

「ね?そう思うでしょ?シゲ。
…もっと高名で実績ある先生がおられる大学も関東にたくさんあるのになんだってわざ
わざうちの大学に来ようと思ったんです?」

怪訝顔がふたつ並んで俺を見てる。

俺は言いたいことを頭の中で組み立て、言葉を選びながら話しはじめた。

「はぁ…実は先日この企画が立ち上がった後いろんな考古学の入門書を斜め読みしたん
ですがその中で城島先生の御本が一番面白くて尚且つわかりやすかったんです」

まずは率直な動機。経歴や肩書きと実力は必ずしも比例しないんだ、どんな世界でも…
これが短い記者家業から得た経験則。
だけど城島先生の本はとっつきやすくって肩書きと中身がきちんと釣り合ってる人もい
るんだ、とそんな失礼な感想をいだいた。(なにしろそんな風に感じるくらい仰々しく
て堅かったんだって、あのプロフィールは)

「『難しいことを難しく』伝えるのは乱暴に言えば誰にでも出来るんですよ、難解な専
門用語をずらずら並べて煙に巻いときゃいいんですから。だけど先生の御本は難しいこ
とを専門知識のない人間にもわかる易しい言葉に置き換えて説明して下さってた、それ
でぜひ城島先生にお願いしたいと思った次第です」
「…はぁ」

いまいちピンと来てなさそうだなぁ。

                       10 思わぬ展開→


***

この山を乗り越えなきゃ、の一念なMさん。でも言ってることは本心なんです。(苦笑)

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