あまりにも時期はずれなおはなし。
なんとか謝辞だけは滑り込みでサイト誕生日にUPできたのでこんどはとりあえず遅すぎる年明け最初の更新を。
例によって非常に時期はずれな…というか予定していたおはなしにエンドマークを打てなかったという(滝汗)
ということで以前書いて自分を納得させたおはなしに書き足してUPという運びになりました。
予定していた平家派の話はなんとか近いうちに……ということで『紅白発表の日』です。どうぞ。
紅白歌合戦出演者発表日、事務所第三会議室にて
「ありがたいなあ」
顔を見ずともなんについてか分かったからそうだね、そう返すとリーダーが笑った気配がした。
目の前のディスプレイ、結構なスピードで画面を流れていくのは2012年を締めくくる赤と白の歌番組に俺らが今年も出ることに対する呟き、ツィートだ。発表の日にたまたま打ち合わせで事務所にいた俺が資料をそろえてるスタッフ待ちの間の暇つぶしにかけた検索を横から打ち合わせ相手その1のこの人が覗き込んでる、ってのが今の状況。
「俺ら自身はとりあえずちょっと前には教えてもらってるからアレだけどさ、やっぱりかなりの数の子がドキドキハラハラしながら待っててくれたんだね」
タヒチのネタにでもなるかな~、そんな軽い気持ちで調べただけだったのにみんなのつぶやきが心底俺らの出場を喜んでくれてて思わず、眺め入ってしまう。
「まあなあ。僕もちらっとネット覗いた時にざっと眺めただけやけど、『ジャニーズ世代交代論』みたいなん?はもともと毎年のように見るやん、それに加えて今年は今回初出場することになったあの子らと僕らキャラやらなんやらかぶる、て言われてたから。いつもより心配させたかも」
踊る以外の形態もとれる子らやから余計やろうしな、そう笑う。
だからわざと鼻で笑って言い放った。
「まだまだ、あいつらには負けねえよ」
「お、強気やな」
驚いた顔して見せてるけどさ、目が笑ってんだよ。それも思いっきり。わかってるけどほんとに曲者だよね、リーダー。
「当たり前じゃん。違う?」
「まあな、踏んできた場数とくぐってきた修羅場の数では負けへんな」
あ、あとたぶん始末書と全員正座で説教の数でも。
あのねえ…。
シレっとした顔でどこまでもボケつづけそうなオヤジは放っておいて引き続きツイートを読む。
『なんでたいした曲もないのに毎年毎年出られるんだ』系の言葉が踊るらしいこの時期のネット。もういい加減慣れたけど、内心思うことがないわけじゃない…世間にも、自分たち自身にも。
俺は面倒だし実は結構凹むからいつもはことさら検索をかけたりしようとは思わないけど、この人は結構しっかりデータとかもらってマイナスな意見に関してもチェックしたりしてる。
「なんでそんなにきっちりチェックしてんのさ。もしかしてリーダーってマゾ?ドM?」
「なんでやねん!そんな部分でMっ気発揮してどないすんねんな。…けどプラスのもマイナスのも結局おんなじやん」
「おんなじ?何が?」
「そう。どっちにも生の意見が詰まってる。ざっと眺めるだけでも今の風向きとかいろんなモンがわかんで?」
「え?分析してんの?」
「分析っちゅうほどのもんでもないけどな。マーケティングの基本やし。持ってんで?見てみる?」
「え?いいよ。遠慮するわ」
「そおか?」
そんな、しばらく前の会話を思い出して小さく身震い。無理だ俺には…そしてたぶん後の3人にもそんなことができるとは思えない。こういう時には『ああ、やっぱりリーダーはちゃんとリーダーなんだな』そう思ったりもする。
「でもこれでやっと各方面への報告とそれから心配へのお礼が言えるわ」
リーダーの言葉で我に返る。
「え?……あ!そっか、そうだ。情報解禁になってからいっぱいおめでとうメールもらってある程度は返したけどさ、やっぱり直接言いたいよね」
「おかんにはさっき手短に報告だけしたけどな」
「あ、俺も。やっぱりめちゃめちゃ喜んでたよ」
巷にどんなに音楽番組が増えたとしても、やっぱり『紅白』は他の番組とはどこか違う。視聴率50%を超えてたような時代じゃなくなったとしてもピンと心地よい緊張感があって出演する俺たちも背筋が伸びる。なにせ究極の生放送番組だ。
「おかんらの年代の人とかにしたらいつまでたってもやっぱり紅白は特別なんよね。小さい子からお年寄りまでいつもの歌番組とはまた視聴層も違うし」
嬉しかったんやろうなめっちゃ声弾んでたもん、たぶん睦ちゃんの顔を思い浮かべてるんだろうリーダーの柔らかな笑顔。
「そうだよね。うちの親も『同時にものすごくたくさんの国で放送してんのよ。そこも頭に入れておきなさいよ』とか言ってたよ…そんなにいつも羽目外してっかな、俺ら」
「そうやな…。羽目外してるっていうより悪ノリしてるっちゅう感じに見えてるんとちゃうかなあ?」
「まあ、それは否定できないよねぇ」
「まあなあ」
けど俺たちの出場を喜んでくれてる人たちはたぶんアレ込みで楽しんでくれてると思うんだけど、そんなことを考えてたらいつのまにかリーダーの話の矛先はすっかり変わっていた。
「せっかく今年もありがたいことに出してもらえるんやし気合い入れていかんとな」
「唐突な話題の戻り方だね。でもほんと気合い入れていかなきゃね」
「うん。気合いも必要やけど」
「それから?」
こっちを向いたリーダーのさっきまでとは打って変わった挑戦的な目が俺を煽ってる。
あ、やっぱりもしかして同じこと考えてる?たぶん俺も同じ顔をしてるだろう。
「「来年こそは雑音を黙らせるような曲を出す!」」
呼吸を図ってもないのに揃う声音、やっぱりだてに付き合い長くないって?
声に出すことはしないけど、これは俺らみんなに共通する意志だ。
顔を見合わせて笑う。
そう、俺たちは走り続けてるから。外野のうるさい奴らを黙らせる楽曲を生みだせばいいんだ、この先。
出来れば自分たちの手で。
それからスタッフが『すみません!』と大汗をかきながら戻ってくるまで俺たちは これからの俺たちの曲について 意見を交わし来年の俺らに思いをはせた 。
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初出場された後輩さんたちについて触れていますが、揶揄等の意識はありません。その点ご理解いただければと思います。
そして。リリックこそがそんな曲になりますように、と願いを込めて。
そしてそして。蛇足だとは思いますが固有名詞を『タヒチ』しか出せなかったので…出演はホムクルでした。