「!!!」

    

 その言葉に長瀬は弾かれたように顔を上げ、三人も虚を突かれたように城島を見詰め
た。

「曲に作ってくれたひとの想いがあるように詞にも想いは籠ってる。わかるやろ?」

 言葉ひとつ選ぶんにどれだけの神経遣うか…ジブンかて詞も曲も書くんやから、そう
言うと城島は口を閉ざし長瀬の目をまっすぐに覗き込んだ。

 
 基本中の基本。『歌うこと』『音楽すること』があまり日常身近にありすぎて、かえ
って流してしまいそうになる『大切なこと』。それを伝えようとする城島の言葉が胸に
落ちる。

「そっか…そうっすよね。『曲』にも『詞』にも『想い』は詰まってるんだ…」

 長瀬が呟く。

「やから。それをないがしろにするやつに僕の曲はやりたない……わかるか?ホンマ
はすごい失礼な話やねんで?」

 理解を促すよう一呼吸置いて続ける城島。

「僕らは表現すんのんの『プロ』なんやろ?やったら『プロの意地』っていうんを見
せてみぃ? 」

 城島のいざなうような……………けれど挑発するような言葉。

「別にこれから一回も間違えたらあかん、とかそんなコト言うてるんと違ゃうで?そ
んなん不可能やってわかってるし逆に『間違わんとこ』ってそっちにばっかり気ィ取
られて長瀬の伸び伸びしたエエトコとか勢いを殺してしもうたら大変やし。僕らかっ
て間違うしやぁ…そやな、いっぺんにライブまるまる1本間違うな、なんて『息すん
な』言うんとおんなじやからとりあえずラスト前の『JUMBO』、これだけでも間
違わんとやってみ?テンション上がりすぎてホンマ歌詞ボロボロやったから、あれ
……これがラストチャンスな?」

   

   

   

 自分の言いたかった事を長瀬が受け止め、しっかり頷いたのを確認した城島は見守っ
てくれた三人に感謝の視線を送り、立ち上がると控室の時計を指差しながら続ける。

「さぁ移動や移動。練習する時間なくなるで?スタジオ行こか。それにさっき『レスト
ラン』でまけたから僕もう腹ぺこやし」
「……………もう、リィダァ、せっかく決まったのにその余韻の無さは何?第一時間
食ったのは誰のせいよ?」

 城島の意を汲み取って軽口を叩きながら続く松岡。国分がドアを開けながら駄目押し
する。

「長瀬のことより自分のダンスの確認したら?また『ハゲ面』飛んでったら困るんじ
ゃないのジョージ・マッシゲ先生?」
「痛いトコ突くなぁ太一」

 笑いに雰囲気が柔らかくなる。五人は移動のため地下駐車場に向けて歩き出した。き
っと先に行ったマネージャーが待ちくたびれていることだろう。

 まだ普段より大人しく、考えながら歩く長瀬に国分が茶々を入れ松岡が突っ込んでい
る。いつもの光景が戻ってきた。
 最後尾を歩く城島の隣りに並ぶ山口。

「ねぇずっと考えてたの?」

 どこか口惜しそうな口振り。指摘は長瀬の胸にだけ響いたわけではなかった。

「あぁ、うん。拘らんと前向きなんは長瀬のエエとこやけどやっぱり忘れて欲しない
事もあるやん?毎度毎度『あれ?忘れちゃったぁ〜』じゃあな。聞き手は僕らのファ
ンの子だけとは限らんし………………………まぁ自戒も籠めてのセリフっちゅう事で」

 そこまで続けた城島は長瀬がいつものように二人とじゃれあい出したのを見ながら言
葉を継いだ。

「普段『長瀬にすごい甘い』言われてる僕から刺された釘やったらちょっとは残るか
と思うんやけど」

 どうせ一時のモンやろけどな、このツアー中もつかな?………聞きようによってはひ
どいことを言いながら笑う城島に笑顔を返して山口も笑う。

「アナタの刺したクギならちょっとは効くんじゃない?…でもそこまで読んでたんだ?
………………アナタらしいね」

 こちらも失礼なコメントを吐き出す山口。

「ねぇ…『JUMBO』次第にすんの?ホントに」

 それでもかわいい末っ子を案じてもいる。

「さぁな♪」

 目に悪戯な光を宿して微笑む城島。山口は『茂くん本気だぞ?とにかく死に物狂いで
頑張れ!』と長瀬の背中にエールを送った。   

    

  

   

  

    

   

    

  

   

  

    

   

    

  

   

  

    

「BABY!BABY!JUMBO BABY〜〜!!!」

 そして最終日、日本武道館。
 なんとかかんとか今までは課題を乗り切ってきた長瀬の雄叫びが会場を揺るがす。滴
る汗、一体化した場内。国分が飛び跳ねながら客を煽る。どんどんヒートアップしてい
く松岡のリズム。山口はどっしり低く構えながらここぞとばかりにベースを響かせる。

 元々勢いを大事にしたいとアルバム収録の時から『一発録り』にこだわった曲。ライ
ブ終盤にふさわしく勝手に体がリズムを刻む。『風船をとばす曲』としてもだいぶ浸透
してきたこの曲の間奏部分、大型スクリーンに『風船準備』の文字。
「風船飛ばしてくれ〜!!!」長瀬の合図で一斉に放たれたジェット風船の目に鮮やか
な原色。

 ステージを見渡した城島は長瀬に向かって『会心の笑み』を浮かべて見せ、その表情
に山口太一松岡の三人はしばらく頭の隅に居座っていた『心配事』が杞憂ですんだ事を
知った。
 長瀬がぱあっと全開の笑顔になって城島に駆け寄り背後から覆い被さるようにじゃれ
ついて行く。

 憂いもなくなりさらにテンションMAXになった五人の勢いは続く『カンパイ!』、
アンコールの『ターミナル』…そして長瀬が作ったWアンコール『(仮)921』まで
もう誰にも止められなかった。

   

   

   

   

 そののち、長瀬が無事城島の曲をゲット出来たかどうかはまた別の話。
 いずれ発表される彼等のオリジナルアルバムで明らかになる……………………………
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……………………………………………………………………………………かもしれない。   

    

  

   

  

    



                              END.
   

    

  

   

  
とても書きたい話だったのですが、筆力の不足でなんだか説教臭くなってしまいました。
でも、その心構え、はいつも持ってて欲しいなぁーと思います。

    



   




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