進化形進行形--prologue--


『生物は生き残りをかけて皆それぞれ必死に進化の道筋を切り開いて行ったのです』

そのセリフが妙に鮮やかに耳に飛び込んできた。

*****

夏のスペシャルイベント出番前の控え室。トークメインだけれど今年頭の歌番組以来久々に俺たちの音楽を好きでいてくれる皆の前で演奏できる機会だということでメンバーのテンションも高い。
ずっとギターを手放さないシゲ、長瀬はさっきまで声帯を温めるのに余念がなかった。俺も一通りコードをさらってベースを置く。

どういう風の吹き回しか珍しくテレビがかかってる。誰チョイスのチャンネルか、はたまたDVDなのかいまいち不明だけど、恐竜がド迫力サイズで大きな画面の中を歩きまわっていて雑談しながらも皆それを視界に入れながら過ごしていた。どうやら『CGで再現する地球56億年の歴史』、とかそんな感じのプログラムらしい。

「すげぇなあ、日本でもみつかってたらいいのに、恐竜。」

長瀬の感想はいつも素直だ。

「いや、いたんだよ?さすがにティラノとかウルトラザウルスほどでっかくはなかったみたいだけど。そうだったよね、リーダー?」

太一に振られシゲが口を開く。

「そやな、日本にも恐竜化石が出る地層はそんな多くはあらへんけど有るよ。たしか福井とか石川とかが結構有名なんちゃうかな。何やったっけ、たしかフクイザウルスとかフクイ……」
「ラプトルじゃなかった?」
「ラプトル?ああそうや、よう覚えてんな太一。そう、フクイラプトルとかそんな地名のついた恐竜が居ったわ」
「大きさだけなら俺らが掘ったやつだって結構でかかったもんね」
「そうやね、復元したら10m以上はあったはず。化石並べたら体育館の二階に上がらな全体像が掴めんかったから」
「……あ、そっか。なんで太一くんとリィダァがそんなに詳しいのかと思ったら化石企画ね」

太一とシゲのやりとりを見ていた松岡がやっと合点がいったって風に頷いた。
携帯から目を上げ会話を聞きながら、画面をぼんやり眺め考える。

厳しい環境の中、生存競争に勝ち残り生き長らえるために『進化』し続ける生物たち。

「進化、か……俺、『あの頃』からちょっとでも進化できてんのかな」

ベースだこを思わずみつめてしまう。
いつからか胸の奥底にずっと居座ってくすぶり続けている疑問。自分は『あの頃』からちょっとでも進化できてるんだろうか。

「山口…?」

シゲの気遣わしげな声で我に返る。俺、もしかして声にそのまんま出してた?

「あ、いや何でもない、何でもない。忘れて?」

気づけばシゲだけじゃなく皆俺を見てる。

「「「「進化…」」」」

どうやら俺から無意識のうちに零れ落ちたつぶやきははメンバーの心に波紋を広げたようだった。


                          →【J】


 


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