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ざ…ざざざ…風が鳴る。
一瞬ごとに違う表情を見せる砂の海。そう、ここはまごうことなく『砂』の『海』だ。

「あ、そうや」

カバンからデジカメとぷち三脚をとりだす…TOKIOベアも。ざりざり三脚の足を砂
にめりこませ水平に固定。

肩にかけたバスタオル。リストバンドは左手にはめてるから釣合うようにベアは右手に
スタンバイ。それからピアスがちゃんと見えるよう髪を左耳にかけて……………と。
手元のリモコンをデジカメに向けた。

「ふう…」

証拠写真完了。笑ってもらえるようにはりきったらちょっと疲れた。
また寝転んで目を閉じる。



さっきからこの風景にやたらとどこかで見た光景が重なる…多分それは資料として見た
映像なんかじゃなく。

…あぁ。

カナヅチだから自発的に、と胸を張れる訳じゃないけどいつの間にか『自分と海』との
距離はかなり近付いた、と思う。
何週間、何ヶ月かのスパンでかならず参加する、どこかライフワークめいてきた気すら
する番組の柱のひとつ、海沿い道をひた走る『ソーラーカー』企画…それから海に魅せ
られた相棒の家。

言われるまでもなく普段思いっきりインドアな自分を自覚してる。だからだろうか、仕
事として参加する時はいつもとは真逆な方向に針が振れる…ヨーロッパを目指すと意気
込んでた2組とのコントラストを考えても目指したルートは間違ってはいないはず……
制作側の視点に立ちがちなのはリーダーとしての職業病かもな、とちょっと苦笑い。



そんな事をぐるぐる考えているうちに体力の限界かはたまた緊張の反動か僕はどうやら
その状態と体勢のまんま眠ってしまったらしかった。


あ、夢だ…不意にそう思った。自覚有りの夢?だけどそんなもんなんだろう。
だって夢なんだし。

夢なんて所詮辻褄の合わない破天荒なものと決まってはいるけれど………。

《え?なにこれ?砂?なんでどんどん流れてくん?…ぅわっ!崩れてくやん?!うそ、
なんやのこれ、?!》

夢の中で僕はいつの間にか砂に押し流され、巨大な蟻地獄(どのくらいかと言うと武道
館くらいはあるデカさ)に捕まりかけながら砂の斜面をひたすら走っていた。

《なんで?》

頭の中いっぱいに疑問符が駆け巡ってたけどゆっくり考えてる暇はなさそうだ。
足の下崩れていく砂の感触がなんだかやけにリアルでヤな感じ。なんでこんな事になっ
てるんだか…気を紛らわせる為にここにはいないみんなにぼやいてみる。

『なぁなぁみんなー、あんなーなんや今変な事になってんねん…なんでやろ?分からん
けどややこしい状況やねんわぁ』

そこまで言ったら吐き出せた安心感よりかえって不安が募ってきた。

『なぁいったいどないしたらええんやろ?…お前らやったらいったいどないする?なぁ
山口?!太一!松岡!?長瀬ぇ!』

走っても走っても…いや走れば走る程すり鉢みたいな斜面の砂が崩れて来て抜け出せな
い、埒が明かない。
さっきまで砂漠を彷徨っていてヘロヘロな上に元々持久力もない僕は(はちゃめちゃな
夢なのにこんなところだけ現実設定なのがなんだか笑える)もがきながらも徐々にすり
鉢の底に近付いていて、そして底には『蟻地獄』の主…なぜこんなところにこんな登場
の仕方をするのか後に自分の深層心理に悩む事必至な………尊敬してやまない大先輩が

『こっちへ来いよ城島』

なんて白い歯を見せながら両手を広げて待ち構えていて。

『……なんでこんなところにいたはるんですか?』

勇気を振り絞ってそう問い掛けた僕に彼はほほ笑むだけで。

一瞬何に対して抵抗してんのかわからなくなってしばしフリーズ…それでもやはりこの
状況で無抵抗のまま捕まりたくはなくて力の限り足掻くけれど。

『…もうアカン!』

どうやってうまくいかない。
万事休す、か。






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