--研究室へようこそ--



             16 『飼い主』−『白衣』−『メガネ』=??





トモヤトモヤトモヤ……なんだか今日聞いたような。
まだある……さっきから城島先生の柔らかい喋り方になんだかデジャヴを感じんだよな……なんで?

それは今置いとくとしても…『イヌガタ』ってなんだ?もしかして『クワガタ』の親戚とか?…んな
訳ねぇか。

なんて思考は拡散カオス化する。

目まぐるしい展開にすっかり意識の外に飛ばしてたけど、ええと今日は。
まず正門をくぐって井ノ原の奴に文句を言いながら大学の坂を上って…でっかい犬にのしかかられて…
コーヒー飲んで………………………………………………………………………………………………。


…ぁあ?!

「さっきの?!」

洗い終わったフライパンを元の場所に伏せ太一さんの横で自作のチャーハンを食べてた俺は思わず立ち
上がって目を見開いた。

「…やっぱり気ぃつかはりました?いったいいつ切り出そうか迷ぉてたんですよ。さっきはほんまありが
とぉございました…けど、レンゲで人を指すんはやめません?」
「…あ、すみません」

慌ててレンゲを置く。苦笑してる城島先生。

遠慮を横においやってまじまじ眺めて見る。
さっきレトリバーの『トモヤ』に押しつぶされてた『飼い主』、そこからくたびれた白衣を脱がして瓶底
メガネを取ってそれから髪を撫でつけたら…たしかに。

「あ、だからあの時『あんな僻地』なんて言ったんですか……あの言葉に内心実は結構びびってたんです
よ?俺」

知らず恨みがましい口調になる。

「いや、あないな『風評』にたじろぐ記者さんなんやったらやっぱりそれまでのご縁やなと思て」
「……意外と『喰えない人』ですねぇ、あなた」
「そぉですか?素直に生きてるだけなんですけどねぇ………けどさっきの言葉、この場合はお褒めの言葉と
して頂戴しときますわ」
「……あのねぇ」

首をすくめて先生が邪気なく笑う……ああ、やっぱりさっき見たわこの笑顔。

気がついたら俺は敬語をどこかにすっ飛ばしてた。




「あのー、ふたりして盛り上がってるとこ水を差して悪いんだけど…どういう経緯でそんな和気藹々として
んのか教えてくれない?でないと山口くんが火ぃ吹くからさ…元々知り合いなの?ふたり」
「て言うかシゲ『さっきの』ってなに?!さっきの、って!」

先生の言葉にびっくりしたのはどうやら俺だけじゃあなかったらしい。
山口さんが体ごとぐるんと城島先生に向きなおってがしっと両肩を捕まえた。

「どういう事?」

さっさと白状した方が身のためだよ?
そんなこと言いながら城島先生を覗き込むその口調は軽めで優しいけど目は笑ってない。

迫力負けしたのかさっきのハプニングの説明をぼそぼそ始める城島先生とむすっとした表情を隠しもせず腕組
みしたままそれを聞いてる山口さん。

「気にしなくていいよ、いつものことだしあれ。山口くん『あの人』限定の心配性なだけだから」
「…はあ」

んじゃ明日9時前に来て、大丈夫ボケボケに見えるかもだけどやるときはやる人達だからさ………チャーハン
を食べ終わって手を合わせながらの太一さんの言葉。毒舌だけどあったかい。
それにしてもあのふたりは普段からあんな感じなのか…。

膨大な新規データを頭に叩き込むに忙しかった俺はこのドタバタに紛れてさっき引っかかった『イヌガタ』って
言葉に感じた疑問の追求をすっかり忘れてたし、そんな俺の様子を見て城島先生と山口さんがどこかほっとし
たような表情をしたことにも気付かなかった。

これが俺とあの人たちの出会い。俺の久々なキャンパスライフはこうして始まることになった。

                          act.two coming soon・・・


***

やっと仲間入り。(苦笑)

ブラウザを閉じてお戻り下さい。