--研究室へようこそ--01 遭遇 「す、すいませーん」 軽い足音がぱたぱた近づいてくる。 「どうやら飼い主がやっとお前を探しあてたみたいだな」 うぉん! 「…まるで返事するみたいなタイミングで吠えるんだな、お前」 「トモ、こらトモ!って」 ぜーぜーはーはー息を切らしながら現れたのは白衣の男。よほど慌てたのかそれとも引 きずられたのか乱れてぼさぼさの髪、前傾姿勢で膝に手をつき瓶底眼鏡を曇らしてる。 はあはあはあ… ようやっと息が整ったらしい。 俺たちの様子を見て取ると男は慌ててリードを拾いゴールデン『トモ』を引き離してく れた……そいで今はそいつにベロンベロンベロンベロン俺の倍ほど舐められてる。 「やめ、やめぇてトモ、起きられへん」 潰れてんじゃん…。 見かねて俺は『トモ』の下で干物状態のその男を引き起こしてやった。 「助かりました。すいません、ありがとうございました」 いつものことなのか苦笑しながらぱたぱた白衣を払う仕草の後こっちに向き直ってにっ こり笑ってぺこりとおじぎ。 横でなんだか一緒に頭を下げてる風な『トモ』が可笑しい。 俺より結構年上に見えるのにこの一人と一匹の表情には邪気がなくて頬がゆるむ。 …そうだ、この際尋ねてみようか。 「あの、ちょっと伺いたいんですが考古学研究室って…」 「へ!?あんな僻地に用事ですか?」 …へ、僻地? たしかに一筋縄ではいかないクセのある人が多い、って聞いた気はするけど…。 びっくり顔のその人はまずいことを言ったと思ったのかその発言を誤魔化すように言葉を継 いだ。横で『トモ』がビクターのトレードマークの犬みたいに首を傾げてる。 「…いえ、すいません。あそこに法文学舎が見えますよね、あの裏です」 ただ昼時なんで出払ってるかもしれませんけど。 「ありがとうございます。アポは13時半なんで」 あ、あそこか…見透かすと角の向こうに校舎が見える。奴が『ここのコーヒーはなかな か』そう書いてた喫茶コーナーを見つけひとまずそこに足を向けることにした。 「それじゃあこれで、ありがとうございました」 律儀に再度頭を下げるコンビに後ろ手で手をふり歩きだす。 30分後の再会をこの時俺は知る由もなかった。 02 coffee break→ *** 巡り合ったのは誰と誰かわかりますよね? ブラウザを閉じてお戻り下さい。 |