|
降る星に 明け方。ふと目覚めてみると隣の布団はもぬけの空だった。 ? トイレかな?そんな事思いながら触ってみた布団は冷たい。 眠る仲間を起こさないよう気をつけながらそっと障子を開けて縁側に出た。 暗い…。 視力はいい方(て言うか遠視気味)だけどしばらくの間一歩も動けなかった。元々暗闇 はあまり得意とは言えない。少しずつ闇になれてきた目で辺りを見回す。 あれか? 置いてあるサンダルをつっ掛けて音を立てないように歩き出した。 今夜は半月だ。 あの人は村長のいる水場に腰かけてじっと空を見上げてるようだった。 「しげ」 驚かせないようそっと声をかける。 俺の声に振り向いたしげはやっぱりちょっとびっくりしたみたいだったけど、それでも 笑ってくれた。 「どないしたん?」 あのね、それって俺の台詞じゃねぇ? 「目ぇ覚めたらいなかったから」 そう言うとしげは決まり悪げにぽりぽり頭を掻いた。 「熟睡タイプの代表みたいなお前を起こしてしもたんか、ごめんなぁ……アラーム、 バイブにしててんけど」 別に、と首を振りながら気付く。 「アラームって…はなから夜明け前に起き出すつもりだったんだ?」 「うん。『今日』『村』に来ててしかも『ピーカン』やったから」 相変わらず謎な台詞を吐く人だねぇ。ちゃんと言いなさいよ。 「説明するよりしばらく一緒に見ててみ?」 不満げな俺にそれだけ言うとしげは口を閉ざしてまたさっきの姿勢に戻った。 しかたなく隣で空を見上げる。気がつけばちゃんと『どこべえ』持参…………ほんとに 計画的な行動なんだ。 降るような星。 空気の澄みかたはは東京とは大違い、しかも眠らない街の光に邪魔されることもない、どこ より明るくきらめく光。 じっと見上げてると吸い込まれそうな錯覚を覚える。 「あ!」 思わず声が出た。 隣で得意げな顔してるしげ。 「すごいやろ?」 言ってる間にまたひとつ。星が尾を引いて流れた。 「来る時ラジオでここ数日はペルセウス座流星群が見える、ゆうてたから」 ピークは一昨日やったらしいけど、そう言いながら見上げてる横顔は不意にいたずらっ子の 笑顔になって続ける。 「今日なら『お願いし放題』やで?」 『し放題』ってアナタ…。言ってる中身は結構ロマン溢れてるのにその言い方で雰囲気 ぶち壊しじゃん。 「ロマンチストだね〜」 わざと茶化してみる。知ってるけどさ、そんなこと。 「やろ?ロマンを忘れたらいかんよ人間」 闇にすっかりなれた目に映る妙に意気込んだしげ。 「あ、また流れた。これだけ見えたら『流れ星いくつ』対決やっても退屈しないよね」 「前にやったとき全然みえへんかったんやっけ山口。懐かしい企画やなぁ…どうせやっ たらもっぺん提案してみよか?『DASH村一晩で流れ星いくつ見つけられるか』、で ももう完徹は辛いかみんな」 「一番キツイのはアナタでしょ」 思うまま口を開く。 「山口にまでそれ言われんのは心外やわぁ」 「なんでよ、俺だからこそ言えんでしょ」 わざとらしく眉間に皺を刻んでしかめっ面を作ってるしげと顔を見合わせて笑う。 「起こしてくれれば良かったのに」 みんなで見た方が盛り上がんじゃん…そう続けた俺にしげはちいさく首を横に振った。 「やってここんとこスケジュールすごいタイトでくたくたやん?みんな。仕事やったら ともかく私用に付き合え…しかもこんな時間に、てそんなわがままよう言わんわ、山口 起こしてもうたんも悪いなぁ思うのにやぁ、ほんまにごめんな」 律義にちっちゃく頭を下げるしげに苦笑を返し空をも一度見上げる。 「勝手に起きて勝手に追いかけてきたんだし俺はしたいようにしてるだけ。邪魔になっ てなきゃこのままここにいてもいい?」 目ぇ覚めっちゃったしさ、ひとりよりふたりでしょこんな時は…そう付け加えた言葉に 返ってきたのは嬉しそうに頷くやわらかな表情、はにかんだ笑みを見ただけで朝やって くる代償の睡眠不足は意識の中から消えた。 俺らが話してる間にもぽつりぽつりと星は流れて…あ、またひとつ。これで7個? 村長の住み処に腰かけてたのがいつの間にか地面であぐらになって久しい。 俺はふとこのシチュエーションになんだかデジャヴを覚えた。 しげとふたり、星、地面にあぐら…?記憶を手繰る。 隣でコロンとしげが地面に寝転がった。 「前にもこうやって山口と星さがしてた事なかったっけ」 おんなじ疑問。 「俺も考えてたの。いつだっけ?合宿所だよね…そこまでは思い出せたんだけど」 「合宿所、合宿所…あ、そうや前にお盆に帰りはぐれた時にお前が付き合うてくれた時 ちゃうか」 「…あぁ。あったねー広い合宿所にぽつんとふたり」 「東京やゆうても盆やったしちょっとは見えたよな?」 「多分2、3個はね。でもこことは比べもんになんないねー」 「けど都会にしたらちゃんと見えた方なんちゃう?」 「かもしんないけどね」 しげをまねて寝転んでみる。視界全部を覆う満天の星空は迫力満点…あれ、思考がしげ 化してきたぞ?そんな事ぼんやり考えてたらまたひとつ。 「上に流れたよ…あんなのアリ?」 「上から流れるて言うんは僕らの思い込みなんかもな。やって宇宙空間て空気ないんや から上も下も関係あらへんのちゃう?」 「そんなモン?なんか釈然としねえ……」 「そんなモンやねんて。だいいちこの『光』かってほんまはすごい遠い…それこそ何万 年とかかけてここまで届いてるんやって…習ろたやろお前も」 「睡眠学習してたからなー理系」 「イスカンダルやって19万8千光年の彼方やん、あんの。睡眠学習か…ものは言い様 やねぇー」 「ほんとだって!」 からかうような目線についムキになる…いっつも思うけどしげは俺の扱いがうまい。強 引に転がすってんじゃなくてなんか自ら掌の上で転がってやろうかなって気にさせんの が。まあ転がされる振りして逆にうまくこっちが転がせる時もあるからしげにも言い分 はあんだろうけど。 「しげ…」 「んーー?」 さっきから気になってた事。 「いったい何をそんなに願ってんの?」 そりゃこれだけ流れりゃ確かにし放題だろうけど。 「…んーそやなぁ」 金やろー名誉やろーそいでからなぁ…指を折って数え出すから。 「こんなシチュエーションでまで繕わないでよ」 俺の言葉にふわり破顔する気配。 「なあ、山口やったら?」 質問返しかよ。 「そーだねーいくつも願っていいってんならサーフィンの上達とーじゅのんの健康とー」 「ひとつだけ、やったら?」 思いの外真剣な口調で聞かれるから言葉に詰まる。 「んー難しいね…て言うか俺があなたに聞いてんじゃん。なんですり替えんのさ」 「すり替える気なんかあらへんけどやぁ…聞いてみたいなぁー思て」 ほんとかね? 俺は腹筋で起き上がるとしげの顔を覗きこんだ。 「なら、いっせーのせで言ってみる?」 「…ほんま?」 「ほんま、ほんま」 おなじように体勢をかえようとするしげに手を貸しながらその疑りの目にさっきの言葉 をまねて返す。ごそごそ、今度は村長の水場に背を預け並んでまた見上げる夜空。 「じゃあいい?いっせーのせ!」 「みんなで音楽!みんなで音楽!みんなで音楽!」 「もっとライブ!もっとライブ!もっとライブ!」 語尾は叫んでるのに辺りをはばかってお互いちっちゃな声なのがおかしくて肩をぶつけ て笑う。 「けーっきょく僕らは音楽から離れられへんのやなあ……」 「だねー」 あたりまえっていやあたりまえだけどね。 「今年は去年の反動か?て疑いたあなるくらいアルバム以降音楽に縁なかったもんなあ」 「去年は今頃『時間ねえー!』とか叫びながらリハしてたっけ。そういや」 記念ライブに向けて大車輪だった、毎日時間がものすごいスピードと密度で流れてた去 年の今頃。 「坂本から記念コンの話聞いたりするとなんや複雑でなぁ」 たしかに今度10周年のあいつらのコンサート詳細とか耳に入って来ると『ヨソはヨソ』っ て思っててもなんだか焦りに似た気持ちが湧いて来る。 「羨ましい?」 「11ヶ所とかゆうてたやん?たしか。僕らは3ヶ所やったからええなぁ思たけど」 けど、あっちは夏コンと合体や言うし。 やったら舞台にも音にもこだわるだけこだわってなおかつ全然別内容でまた回らせて貰 えたんは幸せなんかなーとも思うから。 言葉を切ったしげはそこでがらりと表情を変えた…見惚れる程あざやかに。 「やからこそ、少ないチャンスを絶対モノにせな…な?」 茶目っ気たっぷりな言い方の裏、隠さない本気で笑うしげはこんな時期滅多にお目にか からないライブモード音楽仕様…………………びっくりすんじゃん。いきなりで。 けど。 「だね。なんせメンバー曲シングルカットへのまたとないチャンスだし」 デビュー以来の目標のひとつが現実に近付いてきて子供みたいに目を輝かせてるその顔 を見返して笑う。 そうだよね、逃しちゃだめでしょこの勢いは。 目の前にニンジンぶら下げられた腹ぺこの馬みたいに入れ込んでるあいつらを思い浮か べる…まぎれもなく俺もしげも鼻息荒くエントリーしてる出走馬の一頭。 「目ぇ回るくらい忙しいこの夏を乗り切るためのカンフル剤…いやタフマンかリゲイン か?まあもうMIX DOWNもすんで今更じたばたしてもしゃあないんやけど」 さすがメンバー思いだねーしげさん、こんなオフの場面まで。 「お披露目だからね、いよいよ」 こころはすでに臨戦態勢…しばらくぶり、『音楽』と『5人』俺らのBASEポジショ ンに戻れる日々に向けて。 「反応がごっつ楽しみやけど反面これほど怖い審判もあらへんわ」 「うん。純粋に『曲勝負』だもんね」 だけどほんとに怯えてんのは滅多に楽曲を提供したりしない俺や松岡だって…言葉には しないけど。 「最終的にフタ開けてみるまで結果教えてくれへんのやろ?もしかしたらどれかわかん のってプロモの撮影直前なんちゃう?」 なんや今度のモロッコといいハワイといいせわしなさそうな旅やなあーそんな風に言っ てるけどご機嫌なのはバレバレ。 仕事とはいえ超久々な『5人での旅』…しかも2回。 「お仕事でしょ。結果かぁ〜、聞きたいような聞きたくないような…でも連動してくれ るからこそ揃って行けるんだしさ、素直に楽しも?」 ボーナスとしてさ…事務所からの説明を適当に借りたらしげがくすりと笑った。 「どーせなら『どかん!とボーナス』より『コンスタントに地道な幸せ』な方がありが たいんやけどなー」 短期間に体力勝負な企画の旅2回は辛いわーぼやくしげの肩をなだめるように叩いた。 空はちょっとずつ白み出してもう俺がいつも海で見上げてる色。名残を惜しむようにちょ うど見えた光に向かって叫ぶ。 「もっとTOKIO!もっとTOKIO!もっとTOKIO!」 となりであっけにとられた顔してたしげは破顔して腹を抱えて笑ってる。 「もっとTOKIO…て、僕らがTOKIOやん。それを願うんはファンの子らとちゃ うん」 目尻にうっすら涙まで浮かべて笑うしげに構わず俺は叫ぶ。だって『村』に5人揃うの だってほぼ一年ぶりなんだよ?それぐらい願ってもバチあたんないでしょ。 「もっとTOKIO!もっとTOKIO!…」 叫び続ける俺の横で預けてた背を水場から起こして姿勢を正したしげも口を開く。 「もっと山口!もっと太一!もっと松岡!もっと長瀬!もっと音楽!もっとライブ!」 叫ぶ相手は燃え尽きる事なく地球を巡る人工衛星。さっきも一度軌道を描いてよぎった 人の手になる星------消えることない光。 「「もっともっとTOKIO!!!」」 立ち上がってちっちゃくだけど声を揃えた。 一番TOKIOが足りてないのは誰よりも俺らだよな…そう言いながら視線をふと母屋 の方へ流した俺は母屋の障子の隙間からじっと覗く3対の視線と出会う。 焦げ付きそうな強い瞳。 ……………はいはい、しげを独占して悪うございました。いったいいつから見てたんだ お前ら…。 こころの中で苦笑してまだあいつらに気付いていないしげの肩をつついて知らせる。 振り返ったしげの目が嬉しそうに細められた。 転がるように出てきた末っ子に飛びつかれて驚いてるしげと、その気のない素振りで出 てきてそれぞれのやり方でしげにちょっかいを出してるふたりを横目に名残にひとつ流 れた星を見上げる。 一番真摯な願いはそっとこころの中でだけつぶやいた。 end. ***** 書いても書いても終わらない!と半ば泣きそうな気分で書いていました。この一本に約 半月……トロ過ぎますね。 長い割にヤマもオチもない文章ですみません; のんびりまったりなふたりの会話を書きたかっただけだったのになぁ……どこでどうま ちがったんだろう(滝汗) 5人が村に揃った日とペルセウス座流星群のピークがずれてる…とかの突っ込みは スルーの方向でいていただけると有難いです。 流星群を見てたのに星よりもはじめて見た人工衛星の光に感激していたのは私です…。 書庫 top
|