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-まなざし- その瞳がなんだか悲しそうに見えたから声をかけた。 「どうかしました?」 「…んー」 生返事を返すリーダーはボーッと画面を眺めてる。画面には子供が団体で早さを競う二 人三脚の巨大版…みたいな番組。 「…なんで『早さ』だけを競うんかなぁ」 ぽつりこぼれた言葉に気付いたのは多分俺だけ。 「どういう意味すか?」 「…ぁ、聞こえとったんや?……あんなぁ、近頃バリアフリーとか言うやんか」 「…最近やっと普通に聞く言葉になってきましたよね、バリアフリー」 「………そうやな、長瀬の口からするっと出てくるくらいやし」 ちょっと面食らった顔のリーダー。 「ひどいなーその言い方。前24時間の時車イスの方の役やってそん時すげぇ勉強した んですから、俺だって」 「…あーそやったなぁすごい頑張ってたもんなあの時。ごめんおっちゃん失言や」 「いーですけど。で、そのバリアフリーがあれとどう関係するんです?」 「………んーとな、ニュースとかでバリアフリーバリアフリーってお題目みたいに唱え てるけど、心のバリアフリーはまだまだやなあ…って思て」 あ、別に頑張ってるあの子らをどうこう言うてんのと違ゃうで? ちらり、画面に目を走らせたリーダーは言葉を探すようにして口を開く。 「この番組で言うんやったらな、この場合競うんは『早さ』だけ、やろ?」 こくり頷く。確かにそうだ。 「物事を計る、その計り方は本来ようさんあるはずやと思わへん?例えば仲のよさ、ベ ストパフォーマンス、どんな困難を克服してきたか……それやのにそんな部分は評価し もせんと目に見える『数字』でしか計らへん」 それがなんや切ないなぁ…思って。 もしもこのクラスにハンディを持ってる、例えば車イスに乗ってる子がおったらどない したんやろ、『タイム』を追求する為に『一緒に』を犠牲にしたんかなぁ………て考え たらなんや複雑でなぁ。 リーダーの言葉にただ耳を傾ける。 「『早さ』とか『強さ』ってキーワードは確かに目に見えやすい物差しやわな、僕ら自 身知らず知らずのうちに日常生活すらそういう物差しに頼ってる…けど、ほんまそうや ろか。『ゆっくり』なこと『弱い』ことにはなんの価値もあらへんのやろか?」 僕ら自身『体力集団TOKIO』とか言われて電車と競争したりもしてんのに説得力あ らへんかもしれん…けど、やからこそ真逆の視点から物事を見るんも大事や思うねん。 『早さ』とか『強さ』って言うんはあくまでも『他人と自分を比べる物差し』やんか、 『…より早い、…より強い』って。けどほんまに負けたらあかん相手は『自分』やしな ………『ゆっくり』やったって『弱く』たって構わへん、大切なんは意識の持ち方とか 姿勢やと思わん? 「……そおっすね」 ああ、なんて間抜けな相槌。 まぁ大層な事言うたって僕も実感したん最近なんやけどな……あの子らと付き合うよう になってからやから。 そう言って笑うリーダーの笑顔はこの上なくやわらかい。多分頭には前やっていた番組 で知り合った彼や彼女の顔がうかんでるんだろう。『ハンディ』と括られるものを持つ 彼らとコーナータイトルのとおり『友達に』なってリーダーの仕事への姿勢はより前向 きになった。 「…おっちゃん喋りすぎたな、付き合うてくれてありがとうな」 「ううん…俺らだって計られる物差しが『視聴率』とか『売り上げ枚数』とかだけじゃ 息が詰まるもんねー」 「そやなー」 「俺らは音楽、バラエティ、ドラマっていくつか顔を持っててまだいろんな方向から見 てもらってる方なんだって思うんすよ?けど、まだやっぱり表面的なイメージで決め付 けられてしんどい時ありますもん。ぜんぶひっくるめて『俺』だって叫びたくなったり」 うんうん、リーダーが頷いてくれんのがうれしい。 「世界中に同じ人間がいないのと同じで考え方や感性もみんな違うんだ、ってなんで思 いつかないんだろ、自分の物差しで計ろうとばっかしてる」 俺ら5人だってこんなばらばらなのにね。 「…長瀬の発想は柔軟やねぇ。世の中みんな長瀬みたいやったらもっと生きやすい社会 になるやろうになぁ」 「この世界中俺だらけっすか?」 「そう、全世界『長瀬化計画』」 楽しいような怖いような…そう言ってくすくす笑うリーダー。 「えーっ?!それはちょっと嫌かも」 全世界の人間が俺の顔?怖ぇよ、それ。それに今みんな違う…って話したばっかじゃな いすか…そう言うとますますリーダーが笑う…良かった、もう寂しげじゃない。 「…………『ライブの楽しさ』だったらどこにも負けない……どうせ評価されるんだっ たらそういうのがいいなぁ」 「…そやね、僕ら自身の基本で最大の楽しみなライブで評価されるんやったら本望かな ぁ」 考える事は多分一緒だよね5人とも。 「スタンバイお願いします」 スタッフの声に立ち上がり移動しながら俺はふと自分達が応援したあの番組でリーダー が言った言葉を思い出した。ちいさな一言だったんだけどなぜか今でもおぼえてる。 車イストライアスロンでゴールした彼女を祝福した後、俺なら『これからも頑張って』 そう言うだろうところで『これからもお互い頑張ろな』リーダーはそう言った。上から 一方的にかける言葉じゃない……なんて言うのかな『おんなじ高さからの』言葉。その 言葉に彼女の笑顔がぱぁっと輝いたんだ。 リーダーの使う言葉は『まあるい』。話し方の加減もあるかもだけど、言葉の選びから 優しくて大好き。俺はどっちかって言うと見たまま喋っちゃう方だから余計。 『弟子にして下さい』なんだかそんな気分なのは俺ひとりでパーソナリティをするチャ リティ番組が近付いてきたから? 「どないしたん?えらい静かやんか」 どこか不安が表に出てたのかリーダーが眉を顰めてる……茂子になってるってリーダー キャラが番組と違うから。 急いでぶんぶん首を振る。 「そぉかー、ほな今日も頑張ろか」 そう言って頭を撫でてくれるリーダーの細身の背中に抱き付いてパワーを分けてもらっ た。 「応援しに行くからな。ひとりで頑張るんやないで?大丈夫、僕らもラジオの向こうで 聞いてくれる人もみんなおんなじ気持ちでおるんやから」 ちいさく聞こえた言葉に笑う……やっぱりお見通し?リーダーもしかしてミュータント っすか? よりぎゅっとしがみついてちいさな声で。 「リーダーのパワーもっと分けてもらっていいですか?」 「……ええよ」 その代わりにそのせいで『老けた』とか言わんといてやー。 そう笑うリーダー。お許しが出たから抱き締めた腕を少し緩めて額をリーダーの肩に乗 せた。ぐりぐり擦り付けて落ち着きのいい場所を探す…なんだかリブがマーキングして るのと似てる?もしかして。 感じる体温、流れ込むやわらかな波動。どこにいるのかわからないかみさまの代わりに この人に祈る。 どうかきちんと電波の向こう側にいる人達に俺の言葉が届きますように。 end. *************** これが年末に日記に書いていた『ちょっと毛色の違った話』です。 日頃私が感じた疑問を母子ペアに語っていただきました。いろんな『もの差し』で物 事を計れる人間になりたいなぁ、と自戒も込めて。 24TVのエピソードは実話です。輝いた彼女の笑顔にますます茂さんが好きになりま した。たいちゃんの涙とともに一番心に残りました。 ただ・・・後ろで火ぃ吹きそうになっている人が(多分複数)いると思われるので夜道には気をつけて 下さい;智ちゃん。(爆) お読みいただきありがとうございました!感想等お待ちしてます〜。 書庫 top
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