揃う声、それぞれの心。


2007-2008 Jカウントダウン本番中 

「きれいなハモりだったね〜」
「ほんと。さすがって感じだよね」
「ねぇ、考えたらあの人たちって普段は全然別なグループだよね……それってなんだかもったいない気がしない?」
「うん!するする、もったいない〜。ユニットとか組めばいいのに」
「だよねぇ。『テゴマスwithリーダーズ』とかそんな感じでさぁ」
「その場合はリーダーズの方が先輩だしメインだと思うけど…けど、それいいね、見てみたい〜」

バックで唄い踊る後輩たちが思わず、って感じに移動しながら話しあってる会話が耳に入る。
只今大晦日恒例カウントダウンライブの真っ最中。
まあ年に一度しかないグループの枠を取っ払ったでっかい祭だし舞台にも人は溢れてるからステージと客席両方からの声にかき消されてマイクも通してない今のが聞こえたのは近くにいた何人かにだけだろうけど。
さっき現れて一瞬で彼らの耳を惹きつけたその『ハーモニー』は時間的には1、2分で別にそんな長いもんでもなかったんだけれど、それぞれの場所でそれを聞いてた俺らのこころをざわざわと波立たせた。

***

カウントダウン直後 城島

「なあ、なんでさっきからそんな仏頂面なん?」

カウントダウンを終え、さあこれから移動して12時間の長丁場に備え局近くのホテルで仮眠、という段になって初めて僕は傍らに立つ男(さっきまで年男らしく紋付き袴だった)がさっきからまったく無言のまんま口をへの字に曲げてるのに気づいた。
そう言えばこれだけ先輩も後輩も事務所の人間が一同に会してるっていうのに今日はいつものアクティブさはどこへやら…妙に静か。
そりゃ疲れてるんやろうけどグループの垣根を超えた友人関係を築いてるこいつにしたら珍しい。

僕の言葉にもっとはっきり眉間に皺を刻んだ彼のきつい視線が僕を見る…ていうか一瞬だけどぎろっと睨まれた。いったいなんやねんな。



ええと。
年跨ぎのライブがついさっきハネて先輩方に再度改めて新年のご挨拶、それから日頃すれ違いばっかりなみんなと旧交を温め、ライブのコーナーでコラボした後輩達も揃って挨拶に来てくれて坂本も交えてしばしの歓談…今までの言動をとりあえずざっと思い返してみたけど現在のこいつの不機嫌に対して特に思い当たる節もない。

「TOKIOはそろそろ移動〜」

スタッフの指示にこれから揃って恒例の初詣に向かうマッチさんやヒガシさんから『頑張れよ』『仕事始めうちで見てるからな』なんて声がかかる。
頭を下げて横付けされた移動車に乗り込もうとしたら後ろから『ほんとにほんとに約束ですからね!』『いつかきっとですよ!絶対実現させましょうねっ!』なんて増田くんと手越くんの声。
そしてそれに続けて『言っても無駄だろうけどさ、ほどほどにね。体あんまりいじめんなよ』なんて坂本の気遣い。
増田くんと手越くんがさっき熱心に語ってた企画がどこか…プレミアムででもほんまに実現したらおもろいんやけどなあ、なんて思いながら手を振ってたら後ろから再度感じる無言の威圧…ほんま…いったいなんやねんジブン。

「な」

なんやねん、言いたいことあるんやったらちゃんと言葉にしいや。
そう告げようと振り返ったらなにか言いたげな複雑な表情をしてたのはあいつだけやなく。

…なんでやろ?気ぃつかんうちになんかやってもうたんやろか、僕。
5人揃ってるにしてはありえへんくらい静かな車内。いつもと落差がありすぎて落ち着かん空気の中、僕はさっきからずっと感じるメンバーの視線の意味について考え続けた。

***

TOKIO移動後 坂本

移動車が走り去って視界から彼…彼らが完全に見えなくなって初めて俺は自分が今まで息を詰めてたことに気づいた。

はあ
圧迫感から解放されて思わず吐息、そして脱力。なんであんな迫力満点な奴らばかりあの人の周りには揃うんだ…それにしても知らないとは言えあのメンバーを目の前にしてのあのふたりのさっきまでの振る舞い、それは自覚はなくても宣戦布告と同じ。
まあ実現はしないだろうけど頑張れ、とそっと心でエールを送る。万が一叶ったら(いや億が一、兆が一くらいの確率だろうけど)それはそれで嬉しいし。
『若い』って無謀だけど凄いよなぁ。そんな年寄りじみた感慨を抱きながら俺はさっきのあのシーンを思い返した。

恒例の年越しライブ、今年のコラボ相手は休止期間を挟んでの活動再開で波に乗るグループの後輩ふたり(実はあまりよく知らない、だっていったいどこに接点がある?)とそれから茂くんだった。

まだ全然デビューなんて欠片も見えなかったあの頃、平家派の時にはいけ好かない奴だと思ってた相手。一緒の仕事を重ねるにつれそのイメージは人見知りと関西弁を気にしてのものだとわかってきてかえっていつの間にかあの人の傍が心地よくなってそして現在に至る。
茂くんのギターに合わせて歌ったことがそう言えば結構あったよなぁ。
変わらない包み込まれるような声質、ハモりが揃うとすげえいい気分になれた、金もなかったあの頃の気晴らしの思い出。
今日の気分もあの頃と同じ。こんな懐かしさ久々だよな、なんてせめて感傷に浸る余裕くらいくれよ…ワゴン車の中から刃物みたいに剣呑な視線を投げてきてたあいつらに向かって今更ながら呟いてみる…狭い、了見が狭過ぎるぞお前ら。

落とした肩を叩かれて振り向いたらそこには今度はこれ以上ないってくらいの極上アイドルスマイルを張り付かせてる長野。
別に後ろ暗いところなんてこれっぽっちもないはずなのになぜか蛇に睨まれたカエルみたいな気分で俺は額に脂汗を浮かべた。

***

移動車中 松岡

年があけて最初の渋滞。
いつもと違う妙に静かな車内。
一昨年も去年も『お願いですから本番に向けて体力は残しておいて下さい』と顔を引きつらせながら懇願してたマネがなんだか不気味なものでも見るような目でバックミラー越しこっちを窺ってる。
そりゃそうか、メンバー以外にはこの沈黙の意味は分からねぇだろうな、そんなことを思いながらキャップを引き下ろす。
瞼のうらさっきの光景が蘇ってきた。

回想 松岡

リィダァの声量も声質もどっちかってぇとメインよりハモり向き、それはわかってた…ずっと一緒にやって来たんだし来てるんだから。
坂本くんの歌唱力には元々定評があるしデビュー前のツアーではサポートに付いてもらったこともあるくらい縁も深い。普段から仲がいいことも承知の上。
それはわかってる、わかってるんだけど…。

「まぼやんっ、顔、顔っ!なにやってんだよ!本番中っ!笑えって!」

近くで聞こえる焦った小声に我に帰る。やべえ
ここは移動ステージの上で今は仕事中だ。

ハーモニーに対する割り切れない気持ちを持て余して俺は手近にいた声の主な細目野郎(トニセン、と一括りにされるんだから責任の一端はこいつにも有るはずだ…多分)にちょっかいをかけた。

***

サイドステージ 太一

坂本くんとは同じ日のオーディションで事務所に入った言わば同期であの人の方が年上だけど結構気安くさせてもらってる。うちに負けず劣らず個性豊かな(くせ者揃い、とも言う)メンバーを引っ張る苦労性な親父、一見強面なのにそんなイメージがいつの間にか定着した。

そんな相手とうちのリーダーとのコラボ…いや、本来の曲の主もいるから画面上は4人のショットなんだけど。
なにも引っかかる理由はないしなかったはず…なのにあの『ミソスープ』で後輩の声に続いてあの2人が加えたハモりが聞こえた途端俺は立ち止まって声の主たちの方を振り返ってた。
オリジナルなふたりの声がハモる先輩によって引き立って何より増田と手越をはさむようにして立ってる坂本くんとリーダーが心底楽しそうな笑顔で。
アップになってるオーロラビジョンに映る優しげな先輩顔(いつもの三割り増し、よそ行き仕様)に呟いてみる…ほんっと猫かぶりだよね、リーダー。

***

フロントステージ上 長瀬

重なるメロディーとそれを包むハーモニーになんだかちょっと耳を塞ぎたくなった…実際にはそんなことできる訳もなくて移動しながら視線を唄う彼らからさりげなくそらしてオーロラビジョンに背を向けただけだったけど。近くに立つ光一もなんだか複雑な顔…光一、リーダー大好きだからなぁ。

ねぇ、俺らメンバー以外と見せるその『呼吸ぴったり、アイコンタクトビシバシの楽しげなハーモニー』ってのは反則じゃないです?リーダー。

***

メインステージ袖 山口

メンバーみんなそれぞれにいろんな面子とコラボレーション、俺も自分の責任分担をなんとかこなしてほっと一息…そのタイミングで聞こえてきたハーモニーに思わず唇を噛む。

『ムカつく奴』
坂本が昔シゲを評してた言葉。その頃からどんな紆余曲折を辿って今の距離にたどり着いたのか実のところよく知らない…というか目を逸らしてきた。
ただわかるのはマイナスの評価だったとしてもシゲは坂本にとって無視出来ない存在感を持つ人間だったってこと。

今は『グループを超えたリーダーの絆?』なんてもんを年に一回の対談企画で披露したりオフでも飲みに行ったり、と坂本はシゲにとって気の置けない友人のポジションにいる…シゲのプライベートに口出しする権利は俺にはないが。



丁度年男だ、ってことでクローズアップしてもらえんのはありがたいんだけど、なんでこんな時に限って…それが内心の正直な感想。その分支度やら取材やらなんやらで手をとられてシゲの傍を離れてなきゃならない時間が多い。

まさかそれを見越して、とか言わねぇよなぁ…坂本ぉ?


***

大笑点終了後 城島

カウントダウンの後感じた不可解な硬い空気と疑問符もそのまんま残しながらそのあとの12時間もついさっきようやっと終了。
私服に戻ってこれから共演者たちとごく軽い打ち上げ、それでやっと怒涛の一日(?)が終わる。
ああしんど…。

私服に着替えて一服してたらメールの着信音。

「…さかもと?」


確認するとさっき別れたばかり(気分的には、だけれど)な友人の名がそこにあった。

なんやろ?

「……なんなん?これ」

坂本らしくなく挨拶も件名さえすっとばしたそのメールには『初詣の時に手越と増田が異様に盛り上がってたから気をつけて』、とただそう書かれてるだけ。

「いったいあの子らのなにに気ぃつけろって???」

僕は画面を見つめて首をかしげ思わず呟いた。

「なに、シゲどうかした?」

不意に背後から肩を叩かれぎょっとする…さっきまでこの部屋に居ったんは僕だけやったはずやのにいつの間にこんな近くに来たん?ぐっさん。

「なに、そんな顔して。別に気配なんて消してないって…それだけやっぱお疲れなんじゃない?この年またぎのあれこれで」

僕が言いたかったことを的確に読み取って答えてくるのはさすがやけどやぁ、正直距離が近すぎてちょっと退くくらい…あーびっくりした。
我に帰ってあたりを見回したらいつの間にか他のメンバーもみんな着替えて雁首そろえて座ってる。
やのになんでか妙にシーンとした部屋…なんや、さっき感じたんとおんなじにひんやりした空気。

「や、なんか意味不明なメールやからやぁ…」

雰囲気に圧され語尾がしぼむ。

「さっき、『さかもと』って呟いてたよね。坂本から?」

耳ざといなぁジブン、そう言おうとした僕は山口の表情に言葉の続きを飲み込んだ。
にこっと笑ういつもの笑顔、僕を常日頃一番安心させてくれるそれはいつもみたいにおおらかで爽やかなんやけど、爽やかすぎて刃物みたいで。
スパッと切れそうや、思うんは気のせいやろか…。
さらに背後の太一や松岡、長瀬が依然としてさっきからの僕と山口の会話に加わってきもせずにまるっきりノーリアクションなんがいつもと違いすぎてさらになんか不気味。

けど。

「うん…………坂本からやけど。や、別にたいしたことやないねん。大丈夫や、たぶん」

たしかに意味不明な文面やけどそれは後でまた坂本に訊いたらええことやし…疲れてんのにわざわざ手ぇ煩わせるほどのこともあらへんし。





「そ?ま、アナタがそういうんならいいけどさ。疲れてんだからややこしいことに首突っ込むのやめときなよ?」

僕を気遣ってくれてるんやろうけどどこか不機嫌な口調の山口、そして相変わらず無言のまんまどことなくこっちを窺ってるみたいな太一たち。

「ややこしいこと、てなんやねん…」

けれどいつもの感じのやりとりに滑り込めたことに安堵していた僕はなぜか一層重くなったように感じる空気を疲れのせいだと判断した。

坂本からの文面を背後からしっかり山口に確認されてたことにちっとも気づかないまま。

***

数時間後大笑点打ち上げ終了後、都内某所。城島を除く4人。

テーブルには乾きものと酒…しかし酒もつまみもほとんど減る気配はない。

「ダークホース登場、って感じ?」

沈みがちな空気の中3人の顔を見回しながら口火を切ったのは国分。

「ったく。坂本だけでも十分警戒ラインだってのにな」

いつもの大らかな笑顔を消すと冷たい表情が強調される山口。

「…………兄ぃ、坂本くんからの文面確認したんだよね?」

松岡が恐る恐る、といった風に聞く。

「ああ」

それ以上を語らない山口。だがいつもより低められたトーンがその精神状態を物語っている。目の奥には坂本やコラボした後輩への感情を滾らせているのだろう。

「……。まぁ、坂本くんも今回は計画の主体ってよりは巻き込まれてるって形みたいに見えるけどね」

考慮には入れてもらえなさそうだが一応坂本の立場にも思いを馳せてから松岡は続ける。

「でもこの場合それよりあの2人っしょ。あそこまで接点のない後輩だとリィダァにとってはもう子を通り越してすでにもう孫状態だからうれしいけどどう扱っていいか分からなくて余計に強くは出れないだろうしさぁ…厄介だよね」

脳裏に焼き付いた光景をまたよみがえらせているらしい松岡の表情は苦虫を噛み潰したよう。

「あーあ、日頃接点がない分懐いてくる後輩たちには甘い、その性質にどれほど俺らがひやひやさせられてきたことか……わかってんのかね、あのオヤジ」

愚痴とも嘆きともとれる言葉に溜息とともに同意する頭がみっつ。

「ユニット組んじゃうのかなぁリーダー」

都合のいい時だけはしっかり末っ子ポジションな長瀬は母の手を取り上げられそうでしゅんとして。







しばらくグラスの中の氷に目を落としていた山口がスッと視線を上げる。


「なあ太一…………わかってるよな」

ひた、と見据えられる目。負けじとふたりも言い募る。

「ぜったい、ぜったいっすよ?太一くん」
「見過ごすわけにはいかないでしょ?これは」


「わかってるよ、わかったから松岡も長瀬もそんな必死な目で俺を見るな。山口くん、目から殺気消して。




わかったよ、たぶん増田と手越が立てた企画が来るとしたらまずまっさきに『うち』にだろうからね。

しゃあねぇなぁ、これもすべてTOKIOの平和の為だ…すまん手越、許せ増田、ついでにごめん坂本くん。けど、うちの番組以外に関しては手伝ってよ?」

「プレミアム以外だと浜田さんたちんとことMステとそれから?……太一司会じゃない方のBSと。とりあえず手分けすっか……社長にも根回しが必要だろうし。 それと」
「坂本くん?」
「たぶん今回に関しては言わなくても伝わってるとは思うがな」

そこで言葉を切った山口はニヤリと唇をゆがめる。

「時々牽制は必要だろ?」
「まぁね」

頷く太一と山口の間に交わされるひそやかな笑い。空気が濃密さを増してゆく。

ちなみに長瀬は山口と太一の密談が始まった時点ですでに泥船…でなく大船に乗った心地になったようでこっくりこっくり舟を漕いでいる。これも長年の教育の賜物か。

「坂本くんって苦労を背負い込む運命なんだね…」

自分が坂本の立場なら葛藤しつつも結局その『甘い誘惑』には勝てないだろう、きっと…頭の中でそんなシュミレーションを転がしつつ、はかりごと担当とでも言えそうなコンビネーションで話を進める兄貴分2人の会話を眺めて(下手に口出し出来ないどす黒い空気が2人から噴出しているように見える)松岡はすっかり氷が溶けて薄くなったグラスにようやく口をつけた。
















自ら最大の壁として立ちはだかる意思を固めた太一や山口をなぎ倒して後輩達が立てたその企画が日の目をみるのかどうか、それは日を追って明らかになる…かもしれない。

                                     end


***

いや、すでに彼らによって握り潰されているのは確実かと;

何度も書きますがいったいいつの話だよ!←絶賛セルフ突っ込み中!!
な、難産でした…消しては書き消しては書き。なんとか終われて良かったです。
書き分けられもしないのに複数視点で書きたくなるのがいけないのだとわかりつつ試行錯誤;
さすがに後輩さんふたりの視点は途中で断念しました(滝汗)


お読み頂きありがとうございました!良ければ突っ込み等お待ちしていますv

ブラウザを閉じてお戻り下さい。