俺らがソロコンをやらない理由(わけ)




クリスマスちょっと前の話。
可愛がってる後輩からメールを受け取ったのは年末進行で慌ただしい楽屋だった。

「あぁヒナ今度ソロコンやんだっけ。なにかアドバイスを…ってそれを俺に聞くのが間
違いだよな」

ソロコンの先輩なんて周りに山程いるじゃん。
思わず呟いた一人言に食いついたのはランスルーの合間、暇を持て余していた松岡だっ
た。

「ヒナって村上?…へぇ、あいつもやるんだソロコン。大ハヤリだよね、ここんとこ」

面倒見のいい兄貴肌なこいつは情報が入るのも早い。


「ぇ、そんなにみんなやってましたっけ」

長瀬が差し入れのクッキーをかじりながら話に加わってきた。

「なに言ってんだよ、8に滝ツバに…いやキンキより下はほとんどやってんじゃね?」

光一だろ大野だろ…数え出す松岡。

「へぇ、そんなにみんなやってんだ」

呑気な相槌…相変わらずマイペースな奴だなぁお前。





「そう言や俺らには声かかんないっすね」

どうしてっすかね…不思議そうな顔で疑問を口にする。

「そりゃ俺らが『俺らだから』だろ!」

声と同時に太一のゲンコが問答無用で長瀬に降ってきた…痛そうだ。

「痛いよー何するんすか太一くん」
「お前がなんも考えてねぇからだよっ」

ぐりぐり拳でやられた長瀬が隅で本を読んでたシゲに泣きつく。

「リーダー、太一くんヒドいんですよぉ」

ヒドいってなんだよ!そう息巻く太一を横目にセーフティゾーンに逃げ込み頭をなでら
れ表情を緩めて。




「…ねぇ『俺らだから』ってのはもしかして『席が埋まんないから』って事すかね?」

捨てられた小犬の瞳シュンとした口調に今まで聞いてるだけだったシゲが笑う。

「んー?なんとも言われへんけどそれは違ゃうんちゃうかな。GIGsの申し込み倍率も結
構激烈やったらしいで?」

「そっかー、でもならなんで?」




「なぁ、太一の言うた言葉、もうちょっと考えて見ぃ?」

「だってわかんないのはわかんないんですもん」

いやそれは考えてねぇだろ、そうつっこみたくなるくらいすぐの言葉にちいさく溜息。
シゲと太一が肩を竦め苦笑…さぁでもどう言えばわかるか、そんな事を思ってたらシゲ
がつづけた。

「しゃあないなぁ…なぁ長瀬、そもそもソロコンってなんの為にするんやと思う?」

ふーん、そっちから考えさせる訳ね。

「え?…んーとえーと、いつもとは違う角度からその人を見てもらう為っすかね」

「そやな。
単体個人のグループの中に居る時とはまた違う魅力ってやつを引き出す…それが多分ソ
ロコンの醍醐味、魅力なんやと思う。そう考えたら前に太一がやった一人芝居なんか変
型判なソロコンとも言えるわな」

「そっかー、そう言われれば」

うんうん頷くのを確認して言葉を継ぐ。

「思うんやけどな、僕らにソロコンのオファーがこぉへん理由のひとつはたぶん僕らが
普段からその『いつもとは違う一面』を見せる手段を持ってるからなんちゃうかな?
ドラマとかバラエティとかいろんな方向に常時結構露出してるやろ?僕ら。
バラエティだけやのぉて『脳SP』とか『24時間』みたいに考えさせられる番組にも
たまに使うてもろてるし。

そいでから、たぶんもうひとつ。
…端からほぼ100%断られるってわかっててそんなオファー持ってくるほど事務所の
目も節穴やないって事ちゃう?」

まぁあくまでこれは僕の分析やしもしかしたらぜーんぜん大外れかもわからんけどな、
と首を竦めるシゲ。

いつもながら理路整然、わかりやすいよねぇ…説得力あるわ。

だけど。



「なんで俺らが最初から断るって分かるんすか?やってみたいけどなぁ俺」

…だめだ、長瀬にはまだ伝わってねぇ。

「うーん、ならちょっと視点変えてみよか。
もしも今、ソロコンのオファーが来たとするやん……どないする?受けるか?松岡」

いきなり話を振られた松岡は、だけど準備万端って顔で口を開く。

「俺?まったく全然やってみたくないとまでは言わないけどね……けど、やっぱりNO
THANK YOUかな」
「太一は?」
「俺パス」
「山口は?」
「右に同じ」

即答する俺らにびっくり顔の長瀬。

「ぇ?なんで?なんでみんなそんな即答すんの?」

きょろきょろ俺らを見回してる。

「お前ならできるかもしんねぇけどな」
「ぇ、ぇ?なんで俺だけ?」

自分だけわかってないのが不安って顔。

「そりゃお前がメロディを司るポジションにいるからだよ……けど、そう言う意味で言
うならリィダァと太一くんも出来んじゃねぇ?」

いいかもよ?リィダァのソロコン…松岡、軽口めかした口調だけど目が輝いてんぞ?
お前結構マジだろ。

「そんなんいらんわ、僕がそんなんやったかてギター漫談にしかならんやん」

それか今練習してる『なんですかフラメンコ』に…太一やったらいけるかもしれんけど
な、本気で顔をしかめるシゲに太一が笑う。

「ぇ、俺?いやーリーダーがギター漫談なんだったら俺がやっても似たようなもんなん
じゃね?」

やっぱステージのど真ん中にぽつんとキーボードひとりはつらいわ。
やべ、掌に汗かいてきたよ…想像しただけで緊張したらしい太一が掌の汗を拭う。

「そんなん言うんだったら山口くんだってはなわさんの例もあるしベースでもイケるん
じゃない?」

おいおい、こっちにまで振んなよ。

「春ツアーの名古屋でも言ったじゃん…俺、前出んの苦手。センターポジション嫌いな
んだって」

嫌がる俺を見てまた笑うんだから…悪趣味な。

じっとみんなのやり取りを聞きながら考え顔な長瀬にシゲが声をかける。

「なぁ長瀬、もし長瀬がやるんやったらどんな部分を見てもらいたい?」


「ぇ?みんなに見せたい俺?うーん、いきなりそう言われるとぉ…。

……ガンズとか普段やれない俺ら以外の曲やるとか、それとかとりあえず俺が作った曲
全部とか?」

リーダーとツインギターだったら結構遊べるしぃ太一くんとだったら…ワクワクって顔
で言い募ってるけど。

「だーかーら、お前は!ソロコンだ、っつってんだろ!お前ひとり!
振り返ってもいないんだよ!俺達は!」

再度ゲンコが頭に。

「痛ーい、暴力はんたーい!そのくらいわかってますよぉ………………………へ?」










太一の言葉がやっと飲み込めてきたのか今頃びっくりしてやがる。
あ、顔がくしゃっと歪んだ。

「やっぱり俺も遠慮します、ソロコン…せっかく音楽出来んのに『ひとり』だなんてヤ
だ」

実際自分がその状況に今放り込まれてる、みたいな情けない表情。

「な?僕らがどうしてソロコンやりたあない言うたか、わかった?」

ぶんぶん首が千切れる勢いで縦に振られてるアタマ。
その様子に苦笑しながらシゲが更に言葉を継ぐ。

「お客さんに一番見てもらいたい自分、て考えて僕の頭に真っ先に浮かぶんは音楽して
るとこやねん、みんなと。

確かに僕の担当はギターやしメロディも奏でられるから山口とか松岡よりはひとりでも
形になるんかもしれん。

けどな、ひとりでステージに立つよりみんなで音楽してたい思うねん」





やって僕らバンドやん?





な?って100%確信犯な笑み。

「音を重ねて音楽をつくる楽しさを知ったあとでバラ売りや言われてもなぁ…たまぁに
違うミュージシャンとセッションってのは新鮮で面白いかも、とは思うけど『ずっと』
はキツいわ」

「人見知りするもんねぇ、あなた」

思わず挟んだ茶々……あ、睨まれた。

「五月蠅いわ、『人見知り』なんてどうせメンバーみんな似たり寄ったりやん。

話、戻すで?
僕がやりたい『ソロ』ってのはライブん中でたまぁにあるソロパート、たとえば前やっ
た『徒然』なんか……そのくらいで充分なんよ。

むしろ曲中のギターソロでピンスポ浴びながら弦を掻き鳴らしてる時、それとか
みんなの演奏がぴたっと決まった時言うんが一番みんなに見てもらいたい瞬間やねん」

たしかにフェロモン撒き散らしながらギターをぎゅいんぎゅいんいわせてる姿は普段が
普段なだけにギャップ有りまくり、印象的ってか衝撃的だよね…そんな事考えてる間も
話は続いてる。

「やから『ひとり』を際立たせる為にやるソロコンってのを今んとこあんまり魅力的や
と思わんし、もし話があったとしたってこれから先もあんまりやりたい感じへんの違ゃ
うかなぁ思うんよ」

「俺らに日常一番足りてないのは『音楽』だって事務所もわかってんだよ絶対。
だからソロコンの話はたぶんこねぇ…俺らに逆襲されたくねぇだろうし。

だって、いっくら考えても『一番いい顔してる』って思うのはライブん時の表情なんだ
からさぁ、なんかありきたりだけど……………………やっぱ本業だしね」

悔しそうな、けど楽しそうな顔の太一が言葉を重ねる。

「それにさ、考えて見?
もし……もしもメンバーの誰か、がソロコンやったとしてさ、いったいどんな風にやっ
てんのか、ほんとに大丈夫なのかすげぇ気になるっしょ?

気になって落ち着かなくって結局こっそり覗きに行っちゃうと思うんだよね」

松岡がまくし立ててるたとえはたぶん正しい。
誰がやるにしろ残り4人まで一緒に引きずられて浮き足立ってそうだ。

妙にリアリティの籠った話。
たぶん何度もすでに頭の中で繰り返されたんだろうシュミレート。
その相手はこの場合もやっぱりシゲなんだろうな…。

松岡の熱弁は続く。

「そいで…覗きに行ったら行ったで、今度はその音の隣になんで自分の音がないのかっ
てのに絶対に違和感感じずにはいられねぇ。

我慢出来なくなると思うんだよね、絶対…で、舞台に上がって手ぇ出さずにいられなく
なるって」


「で、結局みんなして舞台の上に勢揃い、って?」

ありえるー、って言うか行けばたぶんそうなるよねーほぼ確定?

太一の脱力系な茶々はだけど結構的を射てると思う。
だからもう一押し。

「な?そうなんのがわかってんならそれはもはやソロコンじゃねぇだろ?
それに前ソーラーの時だか言ってたじゃん長瀬、『芋たこ』でシゲがギター弾いてた時
『見てるだけ』なのが嫌だって」

ドラマの中でシゲが弾くギターの音色………劇中だってわかってるのに、『その横』に
さえ自分達の音がないのがさびしかった。

たしかこないだ松岡の舞台ん時にも誰かが同じような事言ってた気がする。
それははたぶん俺らみんなに共通する感覚。

『音楽は好き』

そして

『このメンバーでやるのが好き』

いつだったか太一ホストのプレミアムのゲストトークでシゲが言った言葉はみんなの気
持ちそのもの。

わかるだろ?






「そろそろ前室に移動お願いしまーす」

スタッフがちょうど呼びに来て歩きながらじっと思案顔だった長瀬がちょっと
立ち止まって不思議そうな表情を浮かべた。


どーした?

「ねぇ、なんでみんなそんなちゃんとわかってるんすか?」

ああ。

「こないだお前が大遅刻した時暇潰しに話してたからだよ!」

あ、掌の跡が残るくらいきれいに太一の平手が長瀬の背中に入った。


その日うちのボーカルがやや涙目だったのにはこんな事情が隠れてた訳だ。










結論。

だから俺らはソロコンをやらない。


                       end.

+++++++++++++

年末辺りに8のメンバーのソロコンが相次いで行われたときに「なんでトキはやらない
んですかね?」と聞かれて妄想した話です。
ほんとにこうだったらいいなぁ、との願望も込めて。

リクエストは『音楽ネタ』。リク、クリアできていると良いのですが。
10万1hit、ありがとうございました!





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