橋の向こう側で。
「なぁ、シゲ機嫌直せよ」
「……………………………………」
大崎島の橋を渡り切ったネコの額っていうのか踊り場的な空間。
どんな『画』を撮ろうか、ロケハンに出かけるスタッフを見送っての小休憩。
スタッフの姿が見えなくなった途端岩場にへたり込んで膨れっ面を隠そうともしなくなったシゲにオレは声を掛ける。
「ねぇ」
プイッと横を向いて不機嫌のアピール。はいはい分かりました、オレが悪かったです。
「ごめん、悪かったです、機嫌直して下さい。この通り」
上目遣いにシゲを見上げて目の前で手を合わせる。ついでに頭も下げる。
「…………………………………………………………ほんま怖かったんやからな」
同じ姿勢でシゲを拝んだままの姿勢を取り続けるオレに根負けしたのかシゲがぽつりと呟いた。
「だって嬉しかったんだよ」
「………なにが」
オレの言葉に返ってくる呆れたような、訝しむような視線。
「急ぐ旅だしさ、いくら『行きたい』って言ってみたってほんとに行ってくれるとは思わなかったから」
禄剛崎をスタートして、いや、スタートする前からオレは絶好調だった。
青い空、風にそよぐ植えられたばかりの稲、横には久々に?コンビを組む気の合う相棒。オマケにやっとでた海岸線には
なんだか面白そうな島。
これでテンション上げずにいられますか…って。
『後悔したくないやろ?』そう言ってまさに『ニヤリ』と言う表現がぴったりな笑みを見せて島へ向かってUターンの
ハンドルを切ったシゲにオレも笑顔を返す。
きっと『まんまガキ』な笑顔のふたりが電波に乗って流れるんだろうけど、この時はもう目先の冒険しか目に入ってなかった。
「…………やから、あんなに揺らしたん?」
それって『恩を仇で返す』っていわへんか……………シゲの言葉は言われてみればもっともだった…ちっとも気付かなかった。
オレの後から恐々、って感じで『単に置かれてるだけ、の板の橋』を渡ってくるシゲの顔が強張ってるのは分かってたけど。
「ボクが高いトコとかあんなバランスの悪いトコ苦手なん知ってるやん、ジブン」
お前やってそんな得意なわけでもないくせに、そう言い募るシゲに言葉を返す。
「だって、あんな『揺らして、揺らして』って言ってるみたいな橋見たらさぁ…」
「怖さよりガキの本能が勝ったって?」
…はぁ。
これみよがしに溜息なんかつくシゲに手を差し伸べる。
「この坂のぼるの、手ぇ貸すから、さ」
「………………ほんまやな?」
オレの手を掴んで立ち上がったシゲは尻を何度かはたくと今度は満面の笑みを浮かべた。
溶岩が噴出した跡、みたいな風化してないゴツゴツの岩場。所々まばらに地面にしがみつくように低く生える木。斜度いったい
何度だよ?そう言いたくなる斜面。まずはこれを登りきらないとカメラは回せないだろう。
この先に『どんな景色』が待っているのか、どんな光景でもどんなしんどい体験でもそれを『あ〜おもしろかったぁ』と笑いあえる
相手が隣にいることにこっそり感謝しながら、帰ってきたスタッフに手を振った。
end.
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ほんとに凄い登りだったんです・・・。
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