『NA・GO・YA』
毎日ぎっちぎちに詰まったスケジュール。自分が選んだ仕事だし現場は緊張も刺激も笑
いもあって退屈はしねえ……けど。その分『俺でなくても』こなせる仕事はほとんど俺
の手前でUターンしてく。ソーラーカー然り村然り…いいんだけどさぁ。
『近頃松岡DASHゲスト扱いなんだって』『ふーん、そうなんだぁ』…そんな会話を
ライブ会場で拾っちまった時には自分の耳の良さを呪ったね。そういう事言う方も言う
方だけど納得する方もする方だって。そりゃあんまりじゃない?
ソーラーカーなんて元々は兄ぃと俺がはじめた企画よ?なのに。『ソーラーカーで松岡
くん見るとゲームとかのレアキャラみたいでうれしくなるんですよ』なんてなじみのス
タイリストさんにまで言われた日には…泣いてもいい?俺。
実際なかなか顔出せてないから村のあれやこれやはほとんどみんなから聞くか画面で確
認…それが現実。北登はかろうじて俺の匂いを覚えててくれたみたいだったけど、ヤギ
…リンダだっけ、には思いきり『誰この人』そんな顔されたし。
俺だって行きたいさ、ロケ…村にも。海沿いの景色を楽しみながらドライブしてうまい
もん食って『離れ離れになったふたりは巡り合えるか』ごっこしてみたいって。村に行
くんなら山菜料理に腕奮ったり北登とじゃれたり…陶芸したり。画面見てて不安になる
もん、はたして村に俺の分の茶碗や湯呑みはあるのかって。仲いいって言われるし別に
それは嘘じゃないけど結構あの人達マイペース(良く言えば、だな)裏を返せば自分の
ことしか考えてなかったりするからね。
だからライブは俺にとってファンの子以上に大切なエネルギー源。体力的には放電なん
だけど気持ち的には充電なのよ。日頃の不足分補う為に貪欲にもなりますってそりゃ。
だって文字通り『ライブ』、ちょっとくらいなら弾けてもみんなに共犯者気分で受けと
めてもらえるし、あの人のデコがほっぺたが『ここやここ!』って俺のつっこみを待っ
てんだから。
俺はあいつみたいに曲ん時自由に動いてリィダァにひっつきに行ける訳じゃない。あの
人達みたいに無言のまんま見つめ合う視線のやりとりだけで1万字超の情報を交換でき
たりもしねぇ。もう一人の兄貴分はちゃっかりリィダァの隣に陣取ってるし。
元々MCの並びだって『お前と山口くんリーダーの近くに置いとくと俺と長瀬の事置き
去りにしてくから』そんな理由でリィダァから遠いんだから。
太一くん、なんだかんだ言いつつくっついてる特権を行使してマイクオフでちょこちょ
こしゃべってる、それはズルくねぇの?……言えねぇけどさ。なんだかすげぇ楽しそう
なんだけど。
瞼裏に浮かぶシーン。
はたく、と見せかけてフェイントのkiss。
わざわざ突っ込みやすいように頭を傾けてたからか 俺の行動にちょっと目を見開いて、それから艶やかに微笑んだリィダァ。
瞬間目の中に拒絶の色が無かったことに安堵して、俺もようやく軽口を口に上らせられた。 背後からの兄貴分の視線がなんだかやけに痛かったけど。
そりゃさっきの俺のはちょっとばかし目立ったかもしんない…けどファンの子は喜んで
くれたでしょ?いっつもつっこみ入れるだけじゃワンパターンすぎるから。ファンサー
ビスよファンサービス。だいいち、そんなのに目くじら立ててたら兄ぃなんかどうなん
のさ、もっといろんなとこ触りまくりじゃん。
『あ、夢だ』そう思うはっきりわかる夢の中にいる。
なんで断言できるかっていうと。
リィダァが何にもない空間にひとり浮いてる、そんな状態だったから。
俺はリィダァを微妙に見上げる位置に居る。懸命に手を伸ばしても、目一杯叫んでみて
も手も声も……………あの人には届かない。
けど、そこにいるのは紛れもなくリィダァで。
………………………なんで?なんでそんな哀しそうな顔すんの?
目を伏せてなにかこらえてるみたいに。噛みしめられた下唇。 なにか言ってよ…口開きかけてやめたりしないで。 え?どこ行くの? なにか聞こえる?聞こえないよなんにも。
………じゃあな?
…またいつか?
なに言ってんのよ!?嘘でしょ?!
怒ってんの?あれに?!
……………………ごめん!俺が悪かったです、ごめんなさいっ!リィダァ!
「乗った途端爆睡や、よう寝てんなー、新幹線の中で珍しい。お疲れやね、松岡………
なんや寝ながら天国と地獄を行ったり来たりしとるみたいな百面相しとる。赤ぁなった
り青ぉなったり、大丈夫やろか。起こしたった方がええんやろか」
「や、このまま寝かしといてやれば?疲れてんだろうし。明日もみっちりドラマの撮り
みたいな事言ってたし」
「そうか?……………………………………そやな、ゆっくりおやすみ、松岡」
俺が夢にもがいてる時に聞こえた声。
『気付いてるなら起こしてよ!兄ぃ、俺が魘されてんのわかってんでしょ?』
『そんなにあっさり納得しないでよリィダァ!』
遠ざかってゆく声に俺は眠りの淵に沈んだまま目の幅で涙を流した。
+++++++++++ 蛇足を承知で付け足してみる。
気遣うような色も滲ませつつ突き放し放置する発言は二律背反の色。
弟分の寝顔を肴にカタチだけの乾杯。時間と場所を憚って潜められた笑い声。
「……ほんま大きいなったんやなぁ。あないちっちゃかったのに今や押しも押されんド
ラマの顔やねんもん。今日の2部なんか体力とうに限界で気力だけで叩いとったやん。
最後の方なんか思わず『昌宏もうちょっとや、やから頑張りぃリズムキープ』て茂子の
心境にになってもうたわ」
「頑張ってたのはたしかだよね。でもさあ…ヘロヘロな分舞い上がってた、で済むの?
あれは」
そう言いながらさっきの痕跡を探すように左のこめかみ辺りをなぞっていく指先。それ
を避けるでもなく深い笑みを刻む横顔。
「可愛いもんやん。メンバー1TOKIO好きな男やもん、全身でエネルギー補給しと
んのやろ」
「アナタがそう言うなら仕方ないし俺が口出しする事じゃないけど、ちょっと弾け過ぎ
なんじゃない?」
「もう風呂入ったから全部流れてもうたって……それにお前には言われたないんちゃう
かあいつも」
「ええーっ?!なんでよ!」
不満120%と主張する口許。
「お前やってキス魔やん。しかもお前の場合頬とかこめかみとか可愛いもんやないし。
お前のが性質悪いんちゃう?」
「………酒の席での話じゃん。俺、あんな公衆の面前でなんもしてねぇもん」
変なところで胸を張る男に対して大きくこれみよがしにこぼされる溜息。
「そこで威張んなや…別にいっこも偉ないし当たり前やん、て言うか人のケツ撫でに来
たりしとんのは数に入らんのかいな」
「あんなん挨拶じゃん。もしくは親愛の情」
「……………………ほんま、口の減らん。でも、やったら『あれ』もやっぱりおんなし
やろ。嬉しいてはしゃぎすぎた結果。可愛いやん」
「今日はとことん茂子モードで行ってたもんね、アナタ。あの時だってまるまる『オカ
ン』な顔してた」
「やって、切替えんとMCまで戦闘モードでいってたらもたへんもん。それに『硬』と
『軟』、『動』と『静』、いろんな部分を見て帰ってもらいたいやん?そいで、その上
松岡が元気になってくれたら一石二鳥?」
「………そこまで言うか。まぁね、今日のお客さんは『くるくるアナタの掌の上で回
る』松岡、が見れてお得だったかもね」
「やろ?」
寝顔を曝しているとは(ましてや自分の行動が俎上に上っているなんて)知らず、夢の
中でも天に昇ったり地にめり込んだりせわしない事この上ない彼。その懊悩も知らぬ気
に『のぞみ』は東へとひた走る。
トイレに立った城島はその寝顔を覗き込んでクシャリと髪を混ぜ、松岡にしか聞こえな
い声量で一言囁いてまた宴の続きへと戻っていった。
end. ******** 頑張れMABOキャンペーン展開中なのですが;どうしてもひねくれた愛でスミマセン……でも、名古屋ではちょっとでも報われて?!よかったね、まぼ。 Mさんが魘されているのにSさんは素で気付かず、Tさんはこの場合故意のスルーだと思われ;(報復(笑))
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