暫定、まいご



■…2005年 7月28日(木).......暫定、まいご1

〜〜〜 〜〜 〜〜〜 〜〜〜〜〜♪
向こうの方から響いてきた大好きな音色に誘われてぼくは走り出した。


***



「いたか?!!」
「「「……」」」

無言で首を振る三人。肩で息を吐き袖で汗を拭う。

「シゲ…」



祈るように名を呼ぶ………それ以外言葉が出ない。
俺、もう一度探してきます!そう言い残して長瀬が駆けてゆく。
夏だと言えどもう日が暮れる。
どこかに紛れた小さな背中を探しあぐねて図体の大きな男が四人、途方に暮れていた。

■…2005年 7月29日(金).......暫定、まいご2

「なんでこんな携帯万能な世の中に『迷子』になんてなんのよ!」

悲鳴じみた嘆き。
連絡を受けて慌てて鳴らした途端コール音はテーブルの上から。

「こんなことになるんなら無理にでも予定切り上げてはじめっから一緒に行っとくん
だった…」


唇を噛み締める。
脳裏に甦る昨日のやりとり。

『夜ね、夜なら俺都合つくから』
『なんとか帰って来れるかな』
『俺も』
『ならやっぱり夕飯食って…それからだね』

それに対して
『ええ〜っ?!そうなん?ほんならおみこし見られへんやん!?ぼくおみこしみたい。
おはやしききたい〜』

からだいっぱいで不満を表してた茂。

『ねぇリーダー屋台は夕方からなんでしょ?なら、俺頑張って早く仕事終わらせますか
ら先に覗きに行きましょうよ』
『ほんま?!』

長瀬の言葉に目を輝かせてたから大丈夫だと思ってたのが甘かったか。


山程の注意事項と共に送り出された長瀬が夕方茂とはぐれてすでに1時間半弱…………
…………………4人で探し出してから40分。

せがまれて買った『ドラちゃんカステラ』を受け取っている間になにかに気を惹かれて
駆け出したシゲをまつりの人込みで見失った長瀬を責めるより、今はシゲを見つける方
が先だった。

■…2005年 7月30日(土).......暫定、まいご3

***

手からすり抜けて行ってしまったぬくもりを求めて俺は走る。
リーダー!
見失った場所から正面の鳥居までいったい何往復しただろ…………………。
なんでいないの?
リーダーーーーーーーーーーーー!



一番でかい俺に見えないはずなんかないのに。

***


■…2005年 7月31日(日).......暫定、まいご4


***
もう!もう…もう!

走るに走れない人込みの中、全方位に神経を尖らせながら。





ほんとにちょこまかすんだからあの人!
いったいどれだけ俺の寿命縮めりゃ気がすむのよ…もう、もう!


お願いだから。
お願いだから、たとえ俺の名じゃなくても構わないから俺らを呼んで。
そしたら……絶対わかるから。

***

■…2005年 8月 1日(月).......暫定、まいご5



***

………………ったく。

いったい何をみつけたんだろ?茂くん。
まぁ、ガキは興味あるモン一直線だしなー。

だけどこんな行き方は拳骨モンだよね。
決定。

***


■…2005年 8月 2日(火).......暫定、まいご6



***

『シゲ、どこだ!』

そう叫んで闇雲に駆け出したい衝動を無理やり押さえ付け参道の終点『鳥居下』での拠
点を引き受けた。

表面上は落ち着いて見えてるらしい…………けど内心一番うろたえてんのは俺だ。
間違いなく。


みつからなかったら…弱気に傾く想像を首を振り深く息を吐いて打ち消す。
……しっかりしろ、『みつかる』んじゃなく『みつける』んだ。


改めて俺はシゲの気配をかけらも逃すまいと五感を研ぎ澄ませた。

***


■…2005年 8月 3日(水).......暫定、まいご7



***
シゲちゃんマンダッシュでやっとききたかった音に追いついたぼくはゆっくり進んでく
おみこしのうしろをいっしょについてあるいてた。


ええなぁーやっぱりこの音。カネとタイコ。気持ちええ。わくわくする。

「やっぱりええオトやなぁーともや、ともや…て。…………あれ????」

ぼくはその時になって初めて長瀬がとなりにおらん事に気がついた。





「…………うそぉ……………………………………………どないしょー?」

あわててきょろきょろしても長瀬はどこにもおらへん。

「で、でんわ?…あ、もってこぉへんかったんや…」

空はもうくらい。
お日さまも半分かくれてもうてまわりもぼくもゆうやけ色。

さっきまで楽しいてたまらんかったのに『ひとり』やってわかったらとたんに今度は
めっちゃ不安になってきた。そんな気持ちでみるとみちもビルもひともはいつもとは
どっか違う顔。

「ここどこ?」

いっしょけんめいさがしてもぼくの知ってるところみつけられへん。

「どないしよー」



どないしよー、なぁみんな、こんな時どないしたらええん?
なぁ…。
なんか言うてや。

ぼくのことよんで、ともや…まぼ……たいちぃ、たつ!!


ハシによってしゃがもうか思たけど…………やめた。
『迷子になったらその場でじっと!』いつもみんなに言われてるコトバやけど今はそれ
じゃあかんのちゃうんかな?そんな気ぃするから。


ぼくいっぱい、いーーーーっぱいはしったし。

■…2005年 8月 4日(木).......暫定、まいご8

どないしよ………。

ともやとはぐれてからいっぱいたった。
まわりはもうゆうやけ色からよるの色になりかかってる。

ぼくはかおをあげて、そらにともやの、まぼの、たいちの、たつやのかおを思いうかべ
た…………みんなもぼくのことさがしてくれてるんかな?

みんなのかおを思いだしたらげんきがでた。

待っとったらあかん。
やったらぼくがともやを、まぼを、たいちを、たつやをさがすんや。

けど、『ここがどこか』だけはわからんとどうにもならへん。
さぁ、どないしよ。


おみこしの後ろでさっきからぼくの事気にしてくれてるハッピのおっちゃん…とりあえ
ずあのおっちゃんにきいてみよ。

「あのー」

「…ん?なんだぼうず?」
「おっちゃん、ここどこー?ぼくなー今、ざんてー迷子みたいなんやけどお宮さんどっ
ちかおしえてくれへん?ぼくなーヒトさがしてんねん」


「…ざんてー?ああ『暫定』な、やっぱり迷子か。そんな気はしたんだが…………けど
自己申告する迷子か、やるじゃねえか」

難しい言葉知ってんなぁ、そう言うておっちゃんは背をかがめて頭なでながらぼくと話
してくれる…なんや笑うとたつやに似た感じ。おっきな笑顔。

「うん。ぼくなーおはやしおっかけてきてん」
「そおかーお囃子好きか、ぼうず」

「うん!!!」

頷くぼくににかっと笑うとおっちゃんはぼくをひょいと抱き上げておみこしの台の上に
のっけてくれた。

「もう宮入りだ、ほらあっちに鳥居がみえるだろ?ぼうずの事探してるならパパやママ
もお宮さんの辺りにいるだろ」

「みやいり?」

なんやろ、みやいりて。

「お御輿が最後にお宮さんに還る事だよ。あと10分てとこか」

それまでお御輿のお客でいな…パパやママがいたら言うんだぜ?そう続けるおっちゃん
に首を振る。

「パパとかママとちゃうー、ぼくをさがしてくれてるんはともやとー、それからたぶん
まぼとーたいちとーたつやー」

ぼくの話を聞いたおっちゃんはちょっと驚いた顔したけどまたにかっと笑ってくれた。

「そういや名前聞いてなかったな、なんて名だ?ぼうず。そんで探してくれてんのは兄
ちゃん達か?」
「ぼく、しげるいうねん。そいでそいで、さがしてくれてんのんは……んーまあ、そんな感じ」

こっくりうなずく。ぼくより大きいのはたしかやし。

「ほれ、ぼうず正面鳥居が見えてきたぞ」
「ぼうずちゃうー、しげるー」
「おお、すまんすまん」

ぼくにはよまれへんかったけど『世話役』ってたすきをかけたおっちゃんがゆびをさ
す。

「どれ?しげ見えへんー」
「見えねえか…なら」

さっきおみこしにのっけてくれたみたいにひょいとおっちゃんはぼくをカタグルマして
くれた。ほんまおっちゃんたつやみたいやー。

ほんまやーおっきいトリイ。
ぼくは今ぼくが迷子やなんてすっかりわすれてた。

「しゅごーい!ほんまやもうお宮さんー」

■…2005年 8月 5日(金).......暫定、まいご9

***




「「「「…」」」」


誰ももう声さえ出さなくなった。時間だけがすぎてゆく。


「兄ぃ…」


太一の目は何ひとつ見逃すまいと今も周囲を見回している。やっとって感じで口を開い
た松岡を目で制し、すべての責任をひとりで背負い込んで見る影もなくしおれちまって
る長瀬に声をかけた。


「大丈夫だって、きっと……いや、絶対みつける。大丈夫だって、シゲだって俺らを探
してる。大丈夫、絶対大丈夫だから」


それ以外言葉が出ない…ほとんど自分に言い聞かせるための言葉。
社務所にも救護所にもいなかった。祭の人波からそれてっちまうことは考えにくい……
………………ってことは、シゲは長瀬を、それからきっと合流してるだろう俺らを探し
てるんだ。

「もう宮入りなんだ…」

近付いて来るお御輿を彩る音色はカネ、タイコ。

「そういえば昨日やたら『お囃子』に拘ってたよね、茂くん」

そう続けたのは太一。


「あ、そういえば…はぐれた時にも聞こえてましたこの音色!」

勢い込んで言う長瀬。

「なんで今頃になってそんな大事な事思い出すんだよ、オマエ!」
「ご…ごめんなさいっ!!」

交わされるやりとり。





「…………?………………………………シゲ?」


不意に呼ばれた気がして辺りを見回す。

「……………………………………あっち、か」

俺はお御輿の方向に耳を澄ませ目をこらした。隣で松岡も伸び上がって向こうを見透か
してる。

さっきまでとは違うさっきまでは掠りもしなかった、探し求めてた存在を感じる………
…………………あっちだ、絶対いる!


「いるよな?」
「……うん。いるね、人騒がせなのが」


俺らは自分の感覚を信じて走り出した。





■…2005年 8月 6日(土).......暫定、まいご10

どこだ?




どこだ、…………………………………………どこだ?!



せめて、名前だけでも呼んでくれ…………シゲ、頼むから。

突然走り出した俺らに慌てて付いてきたふたりもやっぱり気配を感じるのか四方に目を
光らせる。

散々叫びすぎて痛む喉をおしてもう一度名を呼ぼうと息を吸い込んだまさにその時、
『気配』は予想していたより遥か頭上から降ってきた。


「あーっっ!!!!!みんなーーー」

探し求めた先には笑顔で男の人に肩車されて手を振るシゲ。





「……………………全く…」

うんざりした表情を作んのに失敗してる太一。

「良かったぁー……………………………………ほんと人騒がせなんだから」

声の震えてる松岡。

「リーダーぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

長瀬は鼻の頭が真っ赤だ。泣く寸前、みたいな顔。

「シゲ…」

俺もそれ以上言葉にならない。


脱力してろくに声も出せずにいる俺らと対照的に体中で喜びを表してるシゲ。
シゲは肩車してくれてる人に耳打ちしたかと思うとそこから文字通り飛び付いてきた…
…………………………………………………長瀬に。

「ごめんなぁ?ともやー!」
「リーダーぁぁ!」

ひしと抱き合い感動の対面中のふたりを目の端に置いたまま、こっちを眺めてる赤銅色
の肌にいなせな法被姿の人に声をかける。

「シゲを保護して下さったんですか?ありがとうございました!」

汗だくな俺達の様子を見てとってくれたらしいその人は顔を綻ばせて口を開いた。

「ああ。うちの御輿の客人だったんだ。お囃子に誘われて来たって話だったから…神輿
のマスコットご苦労さんだったな」

そう言ってシゲの頭をぽんぽんとしたその人は面白そうに言葉を継ぐ。

「しっかし、しっかりしたぼうずだよなぁー、長いこと祭に関わってるけど『迷子の自
己申告』に出くわしたのは初めてだぜ」

ぼうず兄ちゃん達に会えて良かったな、そう続けるその人に『おっちゃんーあんが
とー!!!!!』とシゲが極上笑顔で手を振る。


「おう!もう迷子になんじゃねえぞ!ぼうず!」
「ぼうずちゃうーしげるー!!」
「おお!次までに覚えとく!」

じゃあな!そう続けるとその人はお御輿の後を追って風のように駆け去った。

■…2005年 8月 8日(月).......暫定、まいご11


「「「「…」」」」


ぴょん!と長瀬のふところから飛び下りて『ばいばーい』とすっかり友達感覚で目一杯
手を振ってるシゲの横で揃ってその背に深々と頭を下げた。

「…なんだか旋風みたいな人っすね」
「また今度、日を改めてお礼に行かないとね?」
「おっちゃんなー大工さんなんやって。『とう……とお…とーりょ…う』ってゆうたら
わかるてゆうてた。おっちゃんの肩車しゅごかってんでーぼくがかたの上で動いてもぜ
んぜん大丈夫やねん、そいで笑ろたらなーーなんかしゅごいたつやにそっくり、おんな
し笑い方になんねんで?…そいでな、そいでな…ぼくタイコもカネもたたかしてもらっ
てんでー……んでなーおみこしのにいちゃんとかおっちゃんとかめっちゃやさしかって
ん…そいでからなー………」



「ちょい待ち、茂くん。なんか今俺らに言う事ない?」

みんなと会えたからかめちゃくちゃハイテンションなシゲに『ちょっと待った!』をか
けたのはやっぱり、というかこいつしかいないだろう…太一。




「あー?……………………んーと……………………………………んーと」

懸命に言葉を考えてるその顔をながめてるだけで喜びがこみあげる。

「…たつ」

「ん?」

「たいち」

「おう」

「まぼ」

「なによ」

「ともやー」

「はい?」




「ただいまーー!」



「「「「!!!!!」」」」



見上げてくる瞳も睫毛もうっすらぬれてて胸がつまる。
言葉を奪われたようにみんなしてその表情に見入っていた。

手を伸ばしてくるから迷わずシゲを抱き上げる。
馴染んだ重み、柔らかな体温。


三方から伸びてくる手が『おかえり』の代わりに汗で湿った髪をぐしゃぐしゃに掻き混
ぜる。


■…2005年 8月10日(水).......暫定、まいご12

***



「!」



ずるいって言うかなんて言うか……………あっという間にするりと『絶対安全圏』に逃
げ込む茂くんに嘆息。

言ってやりたいことは山程…これで全部終わったと思ったら間違いだぜ?覚悟しときな
よ。

***

■…2005年 8月10日(水).......暫定、まいご13

***



ずりい!!



ぜっっったいにずりい。

いっつも、どんな時だって帰んのは兄ぃのとこなんだから。



俺らがどれだけ心配してたか…なんて考えつきもしねえんだろ。
多分10年は縮んだぜ???俺の寿命。

良かったー無事で、でも…………当分の間、俺さまのおやつは抜きだかんね。
反省してよ、その無鉄砲さ。

***

■…2005年 8月10日(水).......暫定、まいご14

***

良かったー。

さっき飛び込んで来たちっちゃな体は汗びっしょりでリーダーがどれだけ怖かったか伝
わってくるみたいだった。

ごめんなさいー、今度は絶対見失いませんから。

***

■…2005年 8月11日(木).......暫定、まいご15

***

たつやがぼくをぎゅってしてくれて高あなったからもっぺんみんなの顔を見回す。

みんな汗だらけや、たつやなんかみずあびしたん?て聞きたいくらい。
ぼくのこといっぱい、いーっぱい探してくれたんや?…………………あんがとぉな。

たいちの、まぼの、ともやの手がぼくの髪の毛をわしゃわしゃなでていく。ぼくもみん
なのほっぺたにてをあてた。のぞきこむように目をあわせニッって笑ってもっとぐしゃ
ぐしゃに掻き混ぜてく大きな、あったかい手。


やっとみんなのところへ帰ってこれた…そう思たら急におなかすいたんを思い出した。
さっきまでそんなん全然感じへんかったんやけど。



「なー、ぼくおなかすいたぁー」

よっぽど情けない顔してたんかたつやがくすくす笑いながらでっかい掌であたまをポン
ポンってしてくれた。

「俺も俺もー。腹ぺこですー、死にそうっす!」

ともやの言葉に『うるせぇ!今までそれどころじゃなかっただろうが!』って噛み付い
てんのはたいち。

そっかーぼくのせいでみんな……………。

下むいたぼくのあたまをなでてひょいって今度はカタグルマしてくれながらたつやは言
うた。

「シゲの帰還祝いだ、ぱーっと行くかー!」

その言葉を待ちかねてたみたいなみんなの返事。

「ホントっすか?」
「やりぃ!」

「ほどほどにね?………腹壊さない程度に加減してよ?みんな」

とりあえず乾杯でしよ、乾杯!そんな意見に手近な屋台で買うてきたビールとしゅわ
しゅわなサイダーでカンパイ!

ともやが、まぼが、たいちが、たつやがしゃがんでぼくとおんなじ目のたかさでぼくの
カンカンに自分の缶をくっつけてくる。ぼくもうれしなってサイダーのカンカンを押し
つけた。


「後でちゃんとお参り行こうな?」
「ほんと今回はまじで神様に祈ったもん」
「苦しい時『だけ』の神頼みってね」

「お礼参りっすね」
「…なんだかオマエが言うと全然違う意味に聞こえるわ長瀬…」

いっつものにぎやかさに戻ったみんなとおみやさんのかみさまのところへおまいり。お
れいもゆうていつもよりみんなおさい銭たくさんいれた。

そのあときんぎょすくいして、わなげして、かきごおりたべて。しゃてきの上手なたい
ちが『俺の事はこれからゴルゴ太一と呼べ』とかゆうてみんなにつっこまれてたり……
……ドラちゃんのおめん、うりきれてたんがざんねんやったけど。

いつもみたいにみんなが隣に居ってくれるのに安心したぼくはどうやらいつの間にかね
てしもうたらしかった。

***

■…2005年 8月15日(月).......暫定、まいご16

***


『?!』


いきなりカクンと首が落ちた、と思ったら………し、シゲ!?

今し方まで隣に陣取ってシゲの世話をあれこれやいていた松岡が5歩先で振り返る。

「どうしたのよ、兄ぃ?」
「いや、リンゴ飴はもういいみたいだぜ、松岡」
「なんで?」

人の流れからそっと抜け出す。松岡がシゲの顔を下から覗き込んで笑った。

「電池切れ?」
「やっぱり寝てるか…なんか急に力抜けて重くなったなーと思ったんだけど…」
「ついさっきまで俺や兄ぃにイカ焼き食わしてくれてたのにね」
「疲れたんだろ、さすがに今日は」
「だね……帰ろっか?そろそろ」

こっちもくたくたよー大きく伸びをした松岡は『重いでしょ、兄ぃ』ってシゲを俺の上
から引き取ろうとしてくれたんだけど…。

「いでででで…やめてくれ、松岡っ!」
「へっ?」
「髪!痛ぇ!」
「あ?…ちょっと待って……………だめだぁ、しっかり握ってて開かねぇや」

とっても残念そうに俺からシゲを剥がすのを諦めた松岡のアヒル口を見るともなしに見
てると、向こうから流れを突っ切るように長瀬と太一が戻って来た。その手には綿菓子
とドラえもんのお面…わざわざ見つけてきたのか。揃って口に人指し指をあてた俺らに
笑いながらシゲを覗き込んでる。

「気持ち良さそー」
「寝顔は『天使』なんだけどねー起きたら『怪獣』だもんなー」

「「そう(か)?」」

揃った俺らの返答にあきれたように肩をすくめるのはやめてくんねぇ?太一。

帰り着いてシャワーしても起きないシゲに苦笑。疲れたんだなー無理もないけど。
くたんくたん、されるがまんまの人形みたいなシゲをあーだこーだ言いつつみんなで着
替えさせてじっと寝顔を覗き込む。

「口あけててかわいー」
「いつもおんなじ格好で寝てるオマエには言われたくねぇんじゃねぇ?茂くんも」
「ええーーっ?!」

「「「しー!」」」

「ごめんなさいっ!」

そんなやりとりの間も目覚めることなく眠り続けるシゲ。規則的に上下する胸、軽く握
られた掌。

やっと帰って来た、それを実感する。

「今日はシゲと一緒に寝るかな…」
「「「!」」」

そう続けた俺に抗議の目が6こ。

みんな思う事はおんなじ、か。しゃあねえなあ…。

「なら今夜は特別。雑魚寝だ…『ここ』で」

「「「やりぃ!」」」

リビングのテーブルやら何やら端に寄せてスペース作り。シゲの枕元には今日の成果?
のあれやこれや。

きっと明日朝一番にはとびきりの笑顔に出会えるだろう。

■…2005年 8月16日(火).......暫定、まいご17 おまけ

ふくさよう………………てゆうねんて?
(さっき、サイダーのかんぱいのあときまったコト)


『でんわ』をちゃんと持ってるか、これからはいつもいーっつもげんかんのところでみ
んなにカクニンされんねんて。
『これ以上俺の繊細な神経、焼き切らないで』まぼがなみだめで言うからしゃあないん
かもしれんけど。

………いったい、ぼくのぷらいばしーっていうんはどこにあるんやろ。


そいでから。
もともと、ひとり…でなんてほとんどソトでえへんしだいじょーぶ、やのに、これから
はニワにもひとりでおりていったらアカンのやて。



かほご、やなぁ…みんな。



けど。
みんなのカオが見えたとき、みんながかわるがわる『ぎゅっ』てしてくれたとき。そい
で、さっき目ぇさましたらみんながぼくといっしょに、ぼくをかこむようにしてねてて
くれんのをみたとき……いまもまだみんなきもちよさそうにねてるけど。

『あぁ…かえってこれた』

ほんまに思た。

そうおもたら『ごめん』より『ありがとう』よりさきにいいたくなってん。……………
………………………みんなが居てるとこがぼくのウチ、やもん。

きのうもゆうたけどせっかくやからもっぺんゆうとく。







             『た・だ・い・まーー』



end.
***

『欠片』に去年夏に連載していた文章をまとめてみました。
ちょっとでも読みやすくなってると良いなぁ;





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