かけ算前夜


一日がかりのロケを終え戻ってきた相棒の部屋。ちなみに師走も半ばな今日の職場は『海岸』。
冷たい海はサーフィンで慣れてるとはいえ体が芯から冷えててやや強引にあの人んちのこたつに潜り込んだ。
ああ、あったけぇ。

「なに探してんの?」

勝手知ったるキッチン、湯で割った焼酎を持ち込んで一息ついたあと上半身だけひねってシゲの背中に声をかける…けどその言葉が届いてるかどうかすらかなり怪しい。
帰ってくるなり一応は客なはずの俺をまったくほっぽらかしにして『たしかここらへんに』『いや、こっちやったかな』とあちらこちらいそいそなにか探しものに夢中なあの人。

そろそろ30分経過。

「あ、あったぁ!」

あ、山口お前だけずっこい!そんなことを呟きながらグラスに酒を満たしこたつに戻ってきたシゲの表情がなんだかすげえ楽しそう、だけどなんかヤな感じ。
なんか声が弾んでますけどぉ?

いったいなにをそんなに一生懸命探してたって……ぇ、写真?
いったいなにが写ってるのかと覗き込んだ手元、その数枚のスナップに写っているのが誰と誰なのかを確認したとき思わずフリーズしそうになった。



「なにこれ」
「なにって見たらわかるやろ?写真やん」
「いやまあそうだよね。それはわかるけど。だけど俺が今聞きたいのはそういうことじゃなくて。たとえば何でこの写真を今そんなに真剣に探してたのか、とか・・・」
「なんか懐かしない?」
「まあそりゃね、シゲのあのてろんてろんなロングコート超久々に見たけどさ」

なんだか噛み合わないやりとり、まあシゲがマイペースなのなんてのは昔っからだけど。この場合いったいなんて言えば俺の胸をよぎったなんとも言えないもやもやがアナタに伝わるんだろう。

シゲの手にあるその写真に写ってたもの。
それはなんだか見覚えのある合宿所近くの夜の道路、歩道に大の字で寝転がってる中居とそしてその傍らにロングコート姿でなんだか挑戦的に微笑みながらしゃがんでるシゲのツーショットだった。あとの二枚も中居とシゲが並んで写ってる・・・ふたりとも、とにかくすげぇ若い。少なくとも俺らのデビューより前だな、これは。もしかしてもうスマップはデビューしてた頃かもしれないけど。

中居のくだけたやんちゃなポーズそして作りもんじゃない笑顔、それらはまんまシゲへの信頼の証…あいつは昔っからガードが堅い奴だったから。めったなことじゃこんなプライベートな顔をあっさり晒したりしない。

「客をほっぽり出してがさがさ何を家捜してんのかと思ったら…いったいそんなものなんで。

           あ、持ってくの?もしかしてそれ。前に言ってた中居のやつ?」

シゲが頷いた顔が嬉しそうなのがなんだかますます気に食わない。

「相も変わらず小道具仕込むの好きだよねぇ。どうせならさあ、その情熱をもっと本業に注ごうとか思わない?」

口をついて出てくる言葉がすねたようにどこか尖ってんのは自覚してる、でも別にもう今さらシゲ相手に取り繕ってみても仕方ない。

「年中押しかけてくる奴は客やなんて言わん。それに『本業に』て、他の誰に言われてもお前には言われたぁないわ」

胡散臭げな顔でそう俺の言葉をいなしたシゲは続ける。

「話がいったいどんな流れになるんか開けてみるまで全然わからんやん、やからやっぱりちょっとは事前に準備しとかんと。相手はあの中居ちゃんやで?…こっちは完全アウ
エーなんやから。必要なかったら別に出さんかったらええんやし」

まあそれはそうだけど。
俺の不機嫌に気づいてるだろうに完全にスルーして涼しい顔のシゲ。松岡なんかだとこれぐらいでもちょっとびびったりもするけど動じる風もない。

「だいたいさあ、そんな昔の写真なんでわざわざとってあるわけ?」

だからちょっと角度を変えてみた。
普段からまめにアルバム整理するタイプじゃないのなんて知ってるし(ていうかほとんどのデータはパソコン保存じゃないか?この人)現に件の写真だってそこいらから掘り出されてきた訳だけど。



中居の正月の深夜特番のオファー、面子は中居と坂本とシゲ。
しかも聞こえてきたところによると人選は中居で結構な意気込みだったらしい。坂本の入所日は太一と同じ日だって言ってたから俺より半年かそこら前ってだけだけど中居は事務所に入るのが俺より早かった分シゲとの付き合いも長い。ふたりで暮らしてた時期もしばらくあったって知ってるから自然に視線がきつくなる。
まあいくら俺が面白くないからと言ってそのオファーは『同時期に合宿所で同じ釜の飯を食った仲間、かつ各グループのリーダーでもある人間×3』がコンセプトなんだろうし、第一シゲ個人にきた依頼だから俺がどうこう口出しできることじゃないけど。

内容はバラエティーを排したガチのトークだそうで…あきらめ、ていうか納得はしててもあっちもこっちもなんだか結構引っかかるところありまくりなんですけどね俺らとしては、まあそう思ってんのはTOKIOだけじゃなくスマップやV6のメンバーもだろうけど。
俺らがいないところで語られる俺らの話、突っ込もうにも訂正を入れようにもその相手がモニターの向こうにいるんじゃ届かないじゃん。まさか乱入するわけにもいかねぇだろうし。




「え?ああ、探せたんはまあ、たまたまなんやけどな。前にこのPCデスク周りのどこかで見た記憶があったから。ちなみに坂本とのはこれ」

そう言って見せられたのは。

「これめちゃめちゃ最近じゃん」

流行りのダーツバー、的を狙う坂本の背景に映り込んでるこの人・・・これってたしか去年の暮れとかじゃなかったっけ?
何でそれを俺が知ってるのか、それは写ってないだけで俺や太一、長野井ノ原なんかもこの場に一緒にいたからだ。

「うん。けどないよりまだええやろ。探してたときに思てんけどな、考えても見ぃや?たとえ同じグループやったとしたって改まってオフで2ショットなんかそうは撮らんや
ろ、きれいなオネエちゃんとならともかく野郎同士で。現に僕、太一とのそんな2ショットなんかたぶん持ってへんし、なら坂本とのちゃんとしたショットがのぉてもしゃあないやん」

言われて考える。まあたしかに酒でも入ってのノリ以外での2ショットなんて仕事でもないと撮ったりしないか。



「けど、やっぱり若っかいなぁ、中居ちゃん・・・・・・いったいいくつぐらいやったんやろ」


シゲの声に現実に引き戻された。写真の表面をなでてるシゲの指先があの頃の日々ごといとおしんでるみたいに優しい。

「いってても二十歳そこそこじゃない?俺らがデビューしてからだともうそんなに接点なかったでしょ、中居と」
「せやな、やっぱりそのくらいかなぁ」
「シゲの目尻とほうれい線の加減から見てもたぶんそんなもん」
「・・・ほっといて」

そりゃあ山口はこの頃お肌つるっつる、まつげばっさばさな美少年やったけどな。

ぷいっと顔を背けてむくれてみせるシゲに笑う。心配しないでも俺もすぐに続くって。

あ、そういえば。

「けど、なんでこの写真だけ取ってあったの、わざわざ」

それを聞いてなかったよね結局。







「え?やってこれ撮ったんジブンやん。このあと代々木まで歩いて吉野屋で牛丼食べたやろ?」

なにをわかりきったことを、そんなきょとんとした顔でシゲは俺を見た。













あの〜えーと・・・・・・・・・・・・・・・シゲさん?









なんだか顔が熱くなってきたのをごまかすようにグラスをあおる。
ライブの挨拶とか意図して決めようとするときは噛んだりしていまいち決まらないのに無意識の言葉はたまに凄い威力を発揮するんだよね。今この瞬間KOされた俺のように。
ほんとアナタには敵わない。

実際はたまたまで、もしかしたら良いように手のひらで転がされてるのかも、そんな気もするけど俺はそれ以上突っ込むのをやめた。







まあいいや、その人たらし存分に発揮してきなさいよ。

もとよりそのつもりだったけど絶対にオンタイムで見よう、そう決める。出来るならメンバー全員引きずって。
それで突っ込むところ全部突っ込ませてもらうからね、どれだけ夜中であっても。

そう腹をくくって俺はまたシゲとの会話に戻った。




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この話は年明けからずっと、ほんとにず〜っと引っ張ってきた話でした。
妄想の極み、ということで・・・書き上げられてほっと一息。
いつの話よ、という定番ツッコミはスルーの方向で・・・。

7年目に入った当サイト、今後ともどうかよろしくお願いいたします。


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