パターンB 【『うち』おと・な・りコンビゲスト回収録後:岡田 】





「お疲れ様でした、。今日はありがとうございました」

収録が終わりちょっと一息と自販機を目指しぽてぽて歩いていた城島に対し掛けられた声。目を向けた先にいたのは今日ゲストに来てくれた事務所の後輩。私服に戻っても男前だ。

「ああ岡田くん、こっちこそ今日はほんまにありがとぉ。盛り上がったしすごい楽しかったわ。やっぱり勝手知った相手やからかメンバーもめっちゃ生き生きしとったしボクも進めやすかったし……あ、嫌やゆうてたのに流してごめんな?あの頃のV」

さっき番組の中で見せられたのは今の岡田にとってはたしかに途徹もなく恥ずかしいデビュー前後の赤面映像。たしかに改めてあまり見返したいとは思わない代物…であるには違いなかったが。
いざ流されてもそこにいるのは同じ道を歩んで来た先輩ばかりで(この際もう一人の女性ゲストのことはスルーして考えよう)スタジオ内には『そういややってたやってた、頑張ってたねぇ』そんなあの頃を懐かしむような空気が広がっただけだったので後味はそんなに悪くない。
それに。目の前の人がうわべだけでなく申し訳ない、と思ってくれてるのはきちんと伝わるから。
第一彼はただ進行する役目を番組的に割り振られているだけで彼に映像の取捨選択権は別にない訳だし。

「大丈夫です、下手で拙くて恥ずかしいなぁって思うだけなんで」

笑いながらちっちゃく首を振って否定。ホッとしたように表情を緩めてくれた城島を見て岡田もホッとする。

「ほんま?そぉ言うてくれたらありがたいわ。
あ…またメールしとくけど今度会うたら坂本や長野、いのっちにもコメントありがとぉ言うといてくれるかな」
「ええ、今度会うたらまぁくんたちに伝えときます。
こっちこそ今日はありがとうございました。カウントダウンとかでたまにみんなと顔を合わしても結局いっつもバタバタバタバタしてなかなかこんな機会ありませんもんね、ほんと楽しかったです」

近頃は映画にも活躍の場を広げ存在感を増している後輩独特のおっとりとした空気は一緒に組んでいたユニット、Jフレンズの頃のまんまで。

「でね、さっきの話なんですけど。『僕=パーカーのイメージ』ってあれ。
なんや引っかかってあれからずぅっと考えてたんですけど、そう言われたらあの頃ってたしかにようパーカー着てた気ぃしてきました。
あっち、地元で部活やっとった頃のグランドコートとかウインドブレーカーとか…元々あんまり服に頓着する質ちゃうんですっかり忘れてたんですけど」

同じ系統の西の言葉で岡田はすまなさそうに城島に向かって頭を下げる。

「へ?そうなん?

やろ?せやんな?…あ〜良かった、まだそこまでボケてへんで。あの時自分で自分の記憶力疑ごうたもん」

さっきあいつらめっちゃ白い目でボクのこと見とったやん。けど結局今回はボクの記憶は別に間違ぉてなかってことやんな?それ。

目を見開いた後ほれ見ぃ、ボクもまだまだ捨てたもんやないでぇ…そう言いながら小さくガッツポーズする城島。
自グループのリーダーとひとつ違いなだけなのにいつも年寄り扱いされる彼はこんな時はめちゃめちゃ無邪気に笑う。その表情はどちらかというと年より幼い印象をもたらすもので。

「覚えててくれて嬉しかったです。枚方から出てきたとこの僕のこと気に掛けてくれてはったんやなぁ、って改めて身に染みました」

『〜じゃん?』『〜でさあ』顔には出さなかったがそんな語尾でやりとりされる言葉は表面はともかく根っこは生粋の大阪人である岡田には異国の言葉のようでなかなかすんなり耳に入ってはくれず、又オーディションや社長の面接など所謂『正規ルート(?)』ではなくバラエティ番組の企画から事務所に入りそのまま一直線にほぼjrを経ずデビューというポジションを得た自分には周りからの風当たりもなにかと強くて。

上京の日程、東京での進学先、めまぐるしい環境の変化、そして待っていたレッスン漬けの日々…自分を置いてけぼりにしたまま物事が勝手に進みだして戸惑うばかりだったあの頃。
どちらもオフではそう喋るほうではないし、いつも誰かしらメンバーが城島の隣にいる、そんな状況だからたまに会っても城島と交わす言葉はいつも大概たわいのないものだったけれど聞き慣れたイントネーション、そしてそこに加わる城島独特のほわっとした空気に包まれると(今考えるとメンバー13人中自分を入れて関西人が4人というのは確率的には結構レアだったと思う)呼吸が楽に出来た。

デビューとほぼ同時に自分のグループだけでなく城島や堂本コンビと一緒に活動するユニットに参加できたのは(その結成のきっかけとなった出来事を思うと今も胸が痛むけれど)自分にとっては大きかった…服の記憶から芋づる式にそんな当時の思いまでも甦る。

「へ?なに?そうやったっけ?……別にそんななんもしてへん思うけどなあ、たぶん」

岡田の言葉に目を丸くする城島。首を傾げている。

「まあ言葉で苦労したって点で『同志』やなぁとは思ってたけど、キンキのふたりや岡田くんは……今の関西系ジャニーズの子ぉらやったらもしかしたら最初っから元々のあっちの言葉貫いて『これが俺のアイデンティティや』て言えるんかもわからんけどやっぱりまだボクらの頃はそうはいかへんかったし。
語尾とかイントネーションとかの矯正って地味やけど実は結構面倒くさかったやん?結局普段の言葉まで、ってのは早々に無理やってあきらめたもん。まわりからは直せってやいのやいの言われたけど」

そう笑う城島。すべて今の言葉でなく標準語で淀みなくそつなく喋る城島、の姿を思い浮かべて岡田は心の中で呟く。

(そんなんまったく別人やん………………ありえへん)

「やからボクも岡田くんや光ちゃん剛くんの話聞いてんの好きやったわ」

自分たちと話すことで同じような感覚を覚えてくれていたと知って岡田は単純に嬉しくなった。

「たしかに結構キツかったですよね」

それでも自分は城島が拓いてくれたルートを歩いて来れたから。
それは細くて曲がりくねっていたり所々途切れかけたり、と辿るにも気力の要るものだったけれどそれでも誰も足を踏み入れたことのない未知の山に挑んだ城島に比べたらその苦労はかなり軽減されている、それはたしかだと思う。
城島にそれをここで告げても自分の為にしたことだときっと返されるだろうが。
そのことに感謝しているのは自分ひとりではなく…。

そうだ。

「……あ、今思いついたんでめちゃめちゃ唐突なんですけど、城島くんこれからお好み食べに行きませんか?僕、昔剛くんに連れてってもろたとこなんですけどめっちゃ懐かしい味なんですよその店。ね、行きましょ?」


何やったら剛くんと光一くんにも連絡とって関西弁尽くしの会なんて面白いやないですか、あのふたりももうこの時間やし都合つくんちゃうかな……………普段は物静かな岡田のあまり目にしたことのないハイテンションに城島はびっくりする。

同じ響きの言葉を話す、その共通項によって結ばれる人の縁。

(まあ……袖すり合うも他生の縁、言うしなぁ)

たまにはこんな日もええか、懸命に剛と光一に宛ててメールを打つ真剣な表情の後輩の秀でた額を眺めながら城島はゆったりと微笑んだ。
                                                                  end.


***

相変わらず「いつのだよっ!」感満載のお話ですが…もういいか。(と開き直ってみる)
書きだした当初は短文に載せた紫さんの話(同じ時間設定なんですよ、蛇足ですが)とおんなじくらいの長さで Which do you like A or B? とかするつもりだったんですがあまりに長さとテイストが違う感じになったので分離&書庫へ格上げ。 
Vの末っ子さんの言葉は正確に言うと北河内系大阪弁(細分化しすぎ;)だと思うんですが『ガコイコ』くらいでしか彼の話し言葉を聞いた記憶がないので雰囲気だけ、な感じで。

帰りがあまりに遅い茂さんを心配して見に来たメンバーに目撃されて更に対外バリアが厚くなるといい。そしてそれに気付かず連絡が途絶えたことを不思議がっている茂さん希望。
とことん斜め視点ですが少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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