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- question - ねぇ、なんで? その呟きは彼の胸にひっそりと根を張って潜んでいた。 年末進行の慌ただしさ真っ最中のテレビ局。 嵐の前の静けさとでも言うように割り当てられた楽屋にはドラマの台本に目を通したり 携帯ゲームで対戦したり雑誌をめくったりのリラックスした時間が流れている。 「ねーリィダァ遅くねぇ?今日そんなややこしいゲストだっけ」 松岡がドアの方を見遣る。 「さぁ、もうそろそろ帰ってくんじゃねぇ?」 そんな会話の背後、時計代わりにかかっているテレビからまるで図ったかのタイミング でたてつづけにお茶と油のCM。 「松岡、松岡………………ほらしげ」 「…違えよ、俺が言ってんのは画面ん中じゃねぇ本物の方」 「それにしてもすげぇタイミング」 「よく流れてますよね…特に『暮れーの元気なーごあいーさつー』。かかってるとつい 手を止めて見ちゃうんですよ今みたいに。ふたりともしょっちゅう会ってんのにねー」 にこちゃん笑顔での長瀬のセリフにいやお前のも同じくらいよく見るよ、と3人が心の 中で呟く。 「いわゆる季節モンだからな。お歳暮ももうそろそろ時期としちゃ終わりだし」 へぇーきちんと贈る時期って決まってるんだぁ…素直に長瀬が感心する。 「今年の夏までのが『お届け編』なら今年のは『日常生活編』って感じ?あの企画立て た人、絶対毎週DASHチエックしてるよね。でなきゃリーダーのガーデニングはとも かく山口くんの陶芸家設定とか窯なんて思いつかねえって」 でも実際の『窯班長』は俺だぞー。今回、オファー相手か設定かどっちか間違えてねぇ か?…ぶつぶつ言う国分。 「なんだか今までなかったくらい地に足が着いた大人って感じで撮ってもらってるよね 今回…特にリィダァ。あの人どうしてもオチ扱いになっちゃうこと多いのに」 リィダァ大好きがだだ漏れなアヒル口。 「いや別にこの場合オチは求められてないんだから」 山口の言葉は耳に入ってはいないらしい。 「どっちかって言うと普段のあの人に近くてすごい自然だしすげぇいいCMだと思う、 思うんだけどさ…今更だけどなんでいつもセット売りなんだろね?兄ぃたち」 依然としてなんの説明も聞かされてないよね、俺ら………ここまでをノンブレスで一気 に言って息も切らさぬ松岡。 「いや別に『いつも』じゃねぇだろ」 シリーズ広告なんて一度きまったらしばらくはずっと、なんて当たり前じゃん。 第一なー夏のまっさかりに撮ったんだぞ?あれ。半端ない暑さの中…冬のジャケットで 死にそうだったんだから。 「いやそりゃCM撮影なんてそんなモンだし仕方ねぇじゃん…ってかいつの間にか論点 ずれてるし」 なんでいつっもセットか、よ?今話してんの。 「知んね。だって俺らは『売ってる』方じゃなく『売られてる』方だもん」 シンプルすぎる山口のこたえに心の中で涙。 「例えて言やぁ八百屋の店先に並んでる野菜と一緒だろ?俺らは。じゃがいもがよく たまねぎとかにんじんも一緒に売れるけどなんでかなーとか考えるか?」 「それはそうだけどさぁ…でも野菜と違って俺らには意思ってモンがあるじゃん」 「………まあそこはちょっと違うか…………そうだなぁむしろ俺も聞いてみたいかも、 どんなコンセプトなのか」 聞いてみればいいじゃん。心の中だけで松岡が呟く。 「お茶の間にはふたりが『2個イチ』だってイメージがあるって事っすかね、俺らほん とは5人いんのに」 ちょっぴりさびしげに言われたセリフ。 「さあなぁ。画面の向こう側にどんな風に届いてるかなんて実際のとこわかんねぇよ… だからそんなしょげるなって」 しゅん、とうなだれた耳の見えるような頭に手を乗せぽんぽん叩く。 「…それに、太一と松岡もやってるじゃねぇか」 あれっすね!と、立ち直りの早い末っ子。 「おーれたーちわーがやーみーなおーし隊…」 飛んでいるあのCMのふたりのつもりなんだろうフリつきの鼻歌は国分の剣呑な視線に 悲鳴に変わる。 「ぎやーっ!ギブギブ太一くんっ!!」 いつものパターンに突入してどったんばったんやりだしたコンビと対照的にまだすっき りしない顔の松岡。 苦笑しながら山口が松岡の隣に座る。 「しげがな」 「…リィダァが?」 「春で一本終わっただろ?だからか『また5人揃ってやりたいなー』ってなんだかいっ ぱい企画書書いてんだよ…俺らは『売られる方』だってのに」 「………………楽しかったよね、あれ」 「そうだな。キャンピングカーで走ったり5人でのドライブ設定とかあって面白かった よな、結構評価も高かったし。ラジオも連動してたから時報になる度カーステから俺ら の声が流れて笑ったよな。今年は夏の方がほとんどそれぞれ別撮りだったからあっちが より印象深いんだろうけど」 「最後のメーカー名しか一緒んとこなかったもんね」 「だな。……だから。な、いじけんなよ」 「誰がいじけてるって?んな訳ないでしょっ!!」 「まあまあ………しげ曰く『これからはCMもセルフプロデュースの時代や!『野豚』 やのうて『TOKIO』をプロデュースや!』…だって」 「ほんとに全くあの人は…」 「ま、しげの努力が実を結ぶかなんてわかんねぇけどな」 まぁ空回り気味の画面上のダジャレよりは『企画力』って面の方がまだ評価されてるみ たいだけど。 一見褒めているのか貶しているのか判りづらい山口の言葉の中見え隠れする絆…自分の 知らないところで交わされていた会話。 『この安定感が癪に触るんだよなぁ』 そんな事を考える松岡の背後でちいさなノック音。 ゆっくり開くドアの向こう、立っているいつもちょっとくたびれ気味の猫背。 「ごめんな、時間かかって。もう、撮りに入るから」 いつの間にかいつもと同じ決着がついていたふたりとイスに座るふたりを見回しながら 城島が口を開く。 「あ、そいでから……なぁ、ぐっさんちょっと来て?」 「なになに?段取りに変更?」 立上がり城島の隣で進行表を覗き込む横顔。 『普通ならアシスタント的な役目は年若いモンに回るモンじゃねぇ?』 城島の隣を不動の定位置にしている為フリップや城島くんカメラを時々任される山口。 段取りの変更をやりとりしながら交わす自然な笑顔。 『続けて一緒に起用されんのはふたり揃った時のあの表情のやわらかさ、からだよな… …やっぱり。相乗効果ってやつ?単体よりずっと生き生きしてんだもん。くやしいけど スポンサーの目は確かだよ。でも…………なら村にもご無沙汰、座り位置も遠い俺には リィダァの相棒ってポジションは未来永劫無理って事か?!』 だんだん内に籠り表情をなくしてゆく松岡を横目で見ながら山口が城島にこっそり耳打 ちする。 「なぁしげ、さっきの話が一息ついた頃を見計らって帰ってきただろ?俺にぜーんぶ おっかぶせて」 「……やって、あんな最中に入ってみ?矢ガモか弁慶の立ち往生か、ってくらいつっこ み食らうやん。あいつら僕には全然容赦あらへんねんもん」 それだけ愛されてるって事だよ。それに矢ガモってあなたどれだけ前の話よ……山口の 言葉に城島が笑う。 「なぁ、フォローしといた方がええんかな?」 視線に母の顔を混ぜた城島の問い。 「いや、大丈夫じゃねぇ?日頃溜め込んだいろんな鬱屈がブレンド熟成されてライブ期間 のあの突っ込みになってんだろうから」 「…そうかぁ?ぐっさんがそう言うならええか」 お待ちどうさん、ほんならそろそろ行こかー。いつまで畳に転がってんねんなー そう言いながら座ったままの国分と長瀬に手を差し延べる城島。 素直に手を取る長瀬、対照的にすぃっと避ける国分。 「ライバルとは馴れ合わねぇ」 「お?そうくるか……やる気やん?明日は負けへんで?」 「こっちだってリーダーにだけは絶対負けねぇ………そうだ、なら負けた方が晩めし奢 り、って事でどう?」 「…えらい強気やんか、ええで?乗るわその勝負」 なんだか周り3人を置き去りにした会話。 そんな断片だけの会話で意志疎通が図れている城島と国分の『山口とのツーカーさ』とは また違う呼吸の合い方に引き戻されて松岡が現実世界に戻って来た。 立たせてもらった長瀬が城島の横で首を傾げる。 「なんの話っすか?」 「ああ、明日収録あんだよ赤坂で」 「元旦深夜にオンエアされる日本語ドリル系なクイズ番組なんやて」 珍しい事に解答者側なんよふたりとも。 「なに考えてこの人と一緒に起用されてんだか今だに分かんねぇんだけどね」 やるからには絶対ぇ勝ってやる。 「ものすごい意気込みやなぁ…けどほんま謎やね」 本気で不思議そうな表情を浮かべる城島。 「…なにそれ」 「なんで」 「いいなぁずるいー太一くん」 3人とも(山口すら)知らなかったスケジュールに驚きを隠せない。 5人の中であまり接点もなく、むしろ外部からは『仲が悪い』と噂され、互いの事を『苦手』 『殺すリストに入ってた』と発言したりしていたふたりがなぜだか揃ってMCを務めた番組、 その情報知識系番組の実績で局の信頼が厚いのは知っていたけれど…。 「いいなぁ、リーダーと太一くんとでクイズ番組……超楽しそ〜」 「いい事あるかよ、ある程度答えられなきゃ恥かくんだぞ」 「そりゃそうですけどねぇ、一人の仕事より楽しいでしょ?…………だって太一くん、 やる気満々じゃん」 「…………………………………………っ(怒)」 「まあまあ……他の事はともかく『言葉系』だけは引かへんで?僕の唯一得意な分野やし」 「俺だって負けねぇよ」 「……ねぇリーダー」 「んー?なんや長瀬」 「唯一、って…ギターは?」 「は?」 一瞬長瀬の発言の意味を捉えきれず周囲の3人の目が点になる。 「…ぁ、そやなー、けどギターは仕事やから……『得意』とか言う問題違ゃうし…せや ないとTOKIOのギタリストとは名乗られへんやろ?」 「あ、そっかー」 「そやろー?」 ひとり的確に答えを返した城島と長瀬の母子の会話。 それを見ながら国分が拳を突き上げる。 「とにかく、明日は勝負だ」 「せやな。相手にとって不足はあらへん、手加減せぇへんで?」 「おう、望むところよ」 笑いあう目の中、火花が散るのは幻か。 ファンの間では彼らふたりの番組名を冠して呼ばれたりもするらしいふたり。 さっきまでの話が話だっただけに思わぬ伏兵に焦る松岡。 山口との阿吽の呼吸、長瀬への溺愛ぶり…………松岡の悲願である城島の最強な相方の 座奪取への道程はまだまだ遥かに遠い。 end. ******* 暮れ〜の元気なご挨拶〜ってことで、年内DLFです……需要があるかは別次元だ、この際。 ここまで時事ネタを入れてしまうと非常に賞味期限が短い;…ことに今更気付きました(滝汗) 設定の日が特定されるssってどうよ。 エネ○スのラジオ時報シリーズはメンバーふたりずつの掛け合いが凄く楽しくて印象深かったです。 一所懸命録音したけどコンプリート出来たんだっけかな; お読みいただきありがとうございました!感想等お待ちしてます〜。 もって帰って下さる際に一声掛けていただけると幸せですv 格納庫 top
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