『ロケ裏の攻防』



『テレカ1枚で居場所を突き止められるか』ロケ前日。五人揃っての収録が終わり、これから城島と国分は先乗りで奈良に入ることになっていた。




楽屋。城島モノローグ。


「あ〜あ、奈良やったらボクの方が絶対土地勘あんのに。なんでボクはいっっも捕まってる方なんやろ……確かに体力はないけどやぁ。その分アタマでカバーするやんなぁ……そうや、いっぺん太一に言うてみよかな」


残りの四人楽屋ドアから登場。


「なぁなぁ太一。明日のロケやねんけどな。今度だけでええから、おまえ捕まってる方にならへん?奈良やったらボクだいたいどこでもわかるしボクにやらせてぇや」


少々意識的に首を傾げて『お願いの仕草』の城島。


「なぁにかわい子ぶってんだよ」


城島は松岡の突っ込みをぺちっと額に受け、赤くなったところををさすって少し顔を歪めながらをを口を開く。


「かわい子ぶってなんかないやん。やってやぁ……たまには太一が捕まってる方でもええと思わん?こんな時ぐらい。それともボクの言うてる事間違ごうてる?」
「そう言われればそうっすね」
「…………まぁ間違ってはないよね。茂くんが奈良に土地勘あんのは確かだし?」
「そやろ?そやろ?」


感心したように頷く長瀬、自分の意見を肯定してくれる山口を味方につけて意気揚がる城島。
それに対して太一はこれ以上はないしかめっ面。


「ぇ〜なんでだよ。長瀬おまえ何も考えてないだろ黙ってろよ………いっつもだけどリーダーに甘すぎるって山口くん。オレぜってーイヤだからね」
「何やねん、そのあからさまに嫌そうな言い方は。たまにはええやん。絶対ボクの方が役に立つって…特に今回は。やって土地勘あるもん」
「ぜってーダメ!!!土地勘があったってさぁ、自分の体力を考えて見ろよ。アンタはおとなしく捕まってればいいじゃん………ほら!もう時間時間。何やってんの、行くよ!!!」


太一足音も荒く退場。


「なんでや。待ってぇなぁ太一って……………ほんならみんな行って来るなぁ」
「気を付けて」
「無理しないでよ」
「頑張ってね〜リーダー」


口々にかかる声に手を軽く挙げて国分を追い掛けて行く城島。
ドアが閉まる。
残された三人。


「………いいなぁ太一くん」


珍しく溜め息をついている長瀬。


「いいよなぁ〜。んなのぜってー代わるワケねぇじゃん。ねぇ」


わかりやすくアヒル口な松岡。


「いわば囚われの“ひめ”を救い出すヒーロー役だもんな。そんなおいしいシチュエーションを太一が棒に振る訳ないよな」


たとえ『老刑事』の格好をしているとしてもそれが城島である事には変わりはない……ずっと支え合ってきたと共に認める相棒を救うのはたとえ『番組』でも自分でありたかった、と今回の国分の役どころを少しうらやましく感じる山口。
『リーダー大好き』な彼らのテンションはおいしいところを攫われて一様に低い。

バンッ!


「「「ゎっ!!!」」」


ふたたび城島登場。


「ど、どうしたのリーダー…忘れ物?」


動揺が表情にでる松岡。


「ん。」


そう簡潔に応えると城島は鏡台の上に置きっぱなしだった眼鏡ケースを取り上げる。


「ダメじゃん、そんな大事なの忘れちゃ」
「やから思い出して取りに来たんやん………それよりさっき聞こえてんけどやぁ…なぁ、だれが『ひめ』やってぇ??ボクはオンナノコとちゃうでぇ」


普段の少し高めの柔らかな響きからはオクターブ下がっている気さえする城島の低い声。おばちゃんキャラを演じたりしているわりに当人はオフの場面で年寄りやおんなのこのように扱われるのを嫌う。


「…ぇぇえ?なんでもない、なんも言ってないって……ねぇ兄ィ?」
「そうそう。そうだよ、幻聴でも聞こえたんじゃないの?」
「んな訳あるかい!!!…………大体ホンマにおまえらは…」


隠蔽するにも抜群のチームワークを見せる松岡と山口に城島が恨み言のひとつも言ってやろうと口を開きかけた時。


「いいなぁ……いいなぁ太一くん。ねぇねぇリーダー近頃太一くんとばっか組んでません?」


心底うらやましそうな声がした。せつなげな子犬の瞳で長瀬が城島を見上げている。


「へっ?」
「言われりゃそうだよな〜兄ぃは一緒にCMとかやってるし村でもツーショット多いから横に置いとくとしてもさぁ…オレや長瀬とロケペアなんてほとんどねぇじゃん」
「前にソーラーカー一緒に乗ったやん……二回も」
「いったいいつの話だよ」


城島が追及する話の矛先が逸れたことにホッとしながら、すねているのかいじけているのか斜に構えて睨み付けるような視線で見上げる松岡。
『置いとくのかよ!』こころの中でつっこみながら山口が口を開く。下二人よりゆったり喋るのは余裕からだろうか。


「でも確かに多いよねホムクル始まったあたりからさぁ。ここんとこ立て続けだし」


口々に言い募られちょっと驚いたような城島。


「なんやのみんなして。確かにここんとこボクと太一がペアの仕事は多いかもしれへん、それはそうやろ。やって……ボクが言うたんやから。しばらくは太一とでええって」
「ぇえ〜!?」
「嘘っ!!」
「なんでだよ!!!」


立ち上がった三人に詰め寄られ、迫力に思わず一歩後ずさる城島。


「や……やって、ここんとこみんなすごい忙しいやんか。山口はドラマやってるし、松岡は舞台の稽古、長瀬今度は映画なんやろ?みんないっぱいいっぱいのスケジュールなんやからその上に詰め込むんはしんどいやん」
「なんでそんないらない事いうのよ。舞台ったってもう終わるじゃん!」
「そない言うたって、そしたらすぐに今度は映画のクランクインちゃうん?松岡」
「うっ…」


珍しく城島に言い負かされる松岡。


「スケジュールを調整すんのはマネージャーの仕事だろ!」


ドラマを引き合いに出されると反論しづらいがこのままだと城島とのロケは夏前までお預け、な事態に頭を働かせ攻める方向を変える山口。


「オレまたリーダーとソーラーカー乗りたいっす!!!」


泣き落としの演技……いや、真顔で泣きそうになっている長瀬。


「そ、そんなん言われたかて……」


良かれと思って言った事で責められ当惑顔の城島。とりあえず手近にいる長瀬の頭に手を伸ばす。
髪を撫でられて少し長瀬の表情が柔らかくなった。
どうすれば丸くおさまるのかと城島が思案していた時…。

バタン!!

ドアがまた乱暴に開いた。国分がずかずかと入ってくる。


「なにやってんのさリーダー。いつまで油売ってんの。みんな待ってんだよ?……………ほらはやく!」


こんどこそ国分は城島の右手首を捕まえ、連行するようにして連れて行った。




嵐の後の静けさのような楽屋。


「太一、オレらに一言のコメントもなかったな」
「「……………………」」


楽屋に沈黙が落ちる。




山口松岡長瀬が三者三様、決定済の今後のスケジュールを変えさせる為のあの手この手に思いを巡らせている事を……誰も知らない。


さっき、ドアの外にあまりに遅い城島を迎えにきていた国分がいたこと、そしてその国分が「太一『』いいだってぇ……見てろよ、ぜってぇ太一『』いいって言わせてやるからな!!!!」と負けず嫌いの闘魂をメラメラと燃え上がらせていた事も。


果たして三人のうちの誰かがスケジュールの変更を勝ち取って城島とロケペアを組むのか、それとも国分が勝利をもぎ取るのか。






……………………………………………それはすべて彼らを見守る神のみぞ知る。




End.



***
まだ『サイトを開けたら良いなぁ〜』と漠然と思っていた時期に、藤郷さまの『待雪草』に貰っていただいた駄文です。
時期的にはダッシュ『テレカ一枚で居場所を突き止められるか』で太一さんと茂さんが共演?したロケの前日設定。
みなさん多忙だったのか、やたら茂太コンビが目に付いた頃です。しかし『……の攻防』とかってタイトル好きだな〜自分。
芸がないなぁ………………ぴったりの題名を考えられる方、尊敬します。
読んでいただいてありがとうございました。
拍手等で一言でも感想を頂けると嬉しいです。

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