|
-- PLEASE CALL OUR NAME -- 突然の雨。雨足を透かして煙る村の景色…撮影続行できるか等これからの段取について 城島が打ち合わせをすませ戻ってきた時縁側はやけに静かだった。 「?」 みんな揃ってるにしては珍しいなぁ…そんな感想を抱きながら様子を窺う。 台本を読んでいたりぼーっと雨をみつめていたり柱に寄りかかって目を閉じていたりな 彼らの意識がさりげに向かっている先には。 珍しくなにやらじっと考えこんでいる末っ子。 眉間にシワを寄せ、でかい体をちっちゃく折り曲げて縁側に体育座りして。どこかかた くなな雰囲気を醸し出していて気にはなってもみんないつものようには声をかけられな いらしい。寝ているように見えた山口が目を合わせた後お手上げ、と言う風に肩をすく めたのを確認して城島は視線をもう一度長瀬に戻した。 こない静かな空気かえって落ち着かんわ…いつもとの落差にそんなことを考えながらと りあえず声をかけてみる。 「どないかしたん?長瀬」 声をかけられて初めて城島が戻って来たのに気付いたらしい長瀬はその表情のまま首を 横に振った。 常にはないおとなしさのリアクションのまままた考え顔な長瀬。 こりゃいつもより手強そうや、内心溜息をつきながら長瀬の隣に座る。そしてなにも言 わずに沈み込んでいるためいつもより低い位置にある頭に手を置き髪を梳き始めた。 「…」 反応なくしかし手を拒む訳でもない、その状態のままの4分、5分。不意に長瀬が城島を 見て小さな声で口を開いた。 「ねぇ…リーダー」 城島を見上げるように呼び掛けたまま言葉を探してまた黙り込む頭をずっと撫でている 掌。 「ねぇリーダー、俺ね……なんか俺このごろどこ行っても『長瀬智也さん』って呼ばれ んですよね…」 はあ? 気のないふりをしながら耳をそばだてていた3人は驚きのあまり手を止め振り向いてふ たりの方を凝視する。 「なんだか落ち着かなくて」 理解不能な台詞に首を傾げる3人を余所に城島は思慮深げなけれどゆったりした表情の まま、長瀬の頭をあきることなく撫でている。 5人を世界から隔絶しているかのような雨の幕。 「そうなんや。やからふさいででたんか」 とりあえず言葉を受けとめると城島は少し方向を変えて次の言葉を綴る。 「それってもしかしたら僕の感じてるモヤモヤとあんがい真逆なんかもな」 城島はどこか自嘲めいた笑みを浮かべているが本気で憂えているようで。 「もしかしたら僕のんと同じにしたらあかんのかも知れんし、僕かてそない深刻に悩ん でる訳やないけど」 と前置きして続ける。 「僕の場合はもうすでに仇名みたいなもんやしその名前のおかげでお茶の間にも浸透で きたんやから感謝半分諦め半分てとこやけどや………ピンとかゲストに呼ばれた番組と かでまで『リーダーリーダー』呼ばれんのは勘弁して欲しい時っていうんも正直あるん や」 お前らのリーダーになった覚えはないわ!なんてな…………ごめんごめん脱線したな、 そう続けた城島は頭に置いていた手に少し力を込めた。 「推測でしかないけどや、多分今の長瀬は『TOKIOの長瀬智也』やなくてただの… ……っていうか定冠詞なしの『長瀬』って存在が一人歩きしてくんに戸惑うって言うか 不安なんちゃう?」 ここんとこ長瀬ドラマ付いてたからなぁ、城島の指摘に長瀬は言われた言葉を口の中で 繰り返す。そしてぶつぶつ何度か復唱した後やっと笑った。 「そう言われれば。そっか……………………………………そういうことなのかな。この 頃特にもう十分顔と名前だけでわかってもらえるからって。でも…なんかどうにもピン とこなくって」 戸惑いながらな長瀬の言葉に横から松岡が言葉を添える。 自分達以外からのセリフに長瀬が顔を向けるとすでにからだごとこっちをみつめている 3人。 「でもなんかわかる、それ。役者の仕事ん時、ピンの仕事ん時は『俺個人』としてやっ てる訳だしテメエの責任はテメエで取んのは当たり前…だけど、責任云々は別にして自 分の名前だけで生きてくのってなんか違う気がすんの。なんか…なんか落ち着かなくて」 やたら饒舌に言い募る松岡の言葉にそれぞれの脳裏をシチュエーションは違えど同じよ うなセリフが巡る。 『もう十分知名度もありますし(TOKIO)の部分は紹介の肩書きからはずしましょ うか?』そう聞かれた経験。そしてその度いつも『いえ、つけといて下さい』って律義 に答えている自分。 頷く4人に意を強くして松岡が続けた。 「なんかさ、なんか(TOKIO)抜きで自分の名前だけだとバランスが…て言うか座 り悪くない?俺的には悪いのよ…………………………すげえ。まあね、デビュー当時は 『名前だけでわかってもらえる存在になる』が目標だったんだからなんかすげえ贅沢な 話なんだけどさ」 今も続く『体当たり番組』から始まってじわじわ知られるようになってきた自分達の名 前。『爆発的に』でなく『じわじわ』なところが自分達らしい…そう思えるようになっ てきたのはどちらかというと最近の事で。 「確かに落ち着かない時あるね」 うんうん同意する頭が4つ。 「俺前に『桜庭』やったじゃないですか。あの時ね、『俺』でなく『TOKIO』でも ないのにひとりドラマの中だけじゃなく歌番組とかで歌ってる自分になんかすごく落ち 着かなくて」 『桜庭』として歌うたび自分の居場所はここじゃない、そんな思いが強くなってしんど かったーそう吐き出す長瀬を見守る視線。 「良かった……あの頃リーダーが『長瀬がひとり歌ってんのを見てさびしかった』って 言ってたけど俺も同感だったから『ヤバいなー感性がこのヒトと一緒なんて』って思っ てたのよ実は。やってる長瀬もおんなじような事感じてたんだ、やっぱり」 「だってね。だってどこ見回しても太一くんもまぼもぐっさんもリーダーもいないんで すよ?それで落ち着いてられます?」 「歌詞忘れたって飛ばしたって誰もフォローしてくれないし?」 雰囲気を変えるように入る茶々。 「ひどい、ぐっさん」 しんみりから爆笑にかわる縁側。 今までずっと聞く側にいた城島が口を開く。 「さっきまでの話を聞いててわかったんはどれだけ自分らの根っこにTOKIOが刻み ついてるかって事やね」 慈しむような視線を周りに向けて城島は続ける。 「あんな全然違う話なんやけどな、僕『言霊』って結構信じてんねん」 「「「言霊?」」」 「言霊ってたしか『その言葉自体に魂っていうか呪力が宿ってる』ってやつ?」 「うん大体はそんな感じかな。『良き言葉には良き力、悪しき言葉には悪しき力』が宿 るって…………………………ていうても僕のは自己流な解釈やから本来の意味とは違う かもしれんけど」 訝しげな顔に続ける。 「昔、初めて社長から電話で『TOKIO』って名前もらった時、うれしかった、ほん まごっつ嬉しかってん。やから決めたん。この名前を大事に、この名に恥じんように頑 張ろって」 嬉しさの中にも『なんだよ、街の名じゃん』と少し斜に構えた感想を抱いた自分と対照 的に素直に感激していた城島の姿が『BAND-TOKIO』の片割れだった山口の脳 裏に浮かぶ。 「あの頃僕の周りにおったんは山口だけ、あったんはギターともらったばっかりの名前 だけ。やから『TOKIO』って名前自体が僕の仲間第3号って感じやった…ギターと 山口と名前で1、2、3な。あの頃は毎日精一杯で考えてる余裕もなかったけどでもそ れがすべての原点で今につながる第一歩やったやん」 淡々と話す城島の表情。 「そのうちに仲間が増えてなんとかかんとかデビューも決まって…もうすぐ12年目。 干支で言うたら一巡りや。ぶっちゃけ山も谷もあったけどとりあえず仕事には恵まれて るし『TOKIO=体当たり、体力集団』みたいにイメージもついた。でもそこまで辿 り着けたんも半分はあの時もらったTOKIOって名前のおかげな気がすんねん。ほん ま名前がただひとつの拠り所やったから」 デビューなんて言葉が地の果てにあるように感じられたあの頃の唯一の希望の光。 「もう半分は?」 「半分はファンのみんなの応援やら僕らの努力やら」 そう答えて続ける。 「さっき『良き言葉には良き言霊』って言うたやろ?言葉ってエネルギーのかたまりな んや。ライブのアンコールでみんなが呼んでくれるうちらの名前を思い浮かべてみ?」 渾身の演奏、降るような拍手、肌で感じる絶大なエネルギー。たしかに一緒にライブを 創ってる…そう感じる瞬間。 「やから大事に『TOKIO』って呼んでたら名前も僕らを裏切らへんと思う。僕らが 『TOKIO』を大切に思ってるかぎり…今までそう信じてきたし信じてるかぎりきっ と大丈夫」 そこで言葉を切った城島は鮮やかに笑った。 「いつやって、たとえ個人の仕事してたって僕はひとりやない。僕はTOKIOって 名前とみんなに守られてる」 「「「「…」」」」 「(TOKIO)を付けること、付けてもらうことで日々絆を結び直してんねん。やか らぼくはこれからも(TOKIO)をつけて呼んで貰おう思う………………………僕ら が望んで、そしてファンのみんなが『TOKIO』を望んでくれるかぎり」 できれば一生『TOKIO』で居りたいからな、城島はそう言葉を締めくくった。 言葉を発さず思案顔の4人。別にリアクションを期待していたわけではないらしい城島 が笑いながら空を見上げる。 「まぁこれはまるっきり僕の考え方やから参考になったかはわからへんけど。こんな考 え方もあるんやなぁっちゅうことで」 よいこらせ…立ち上がって大きく伸びをすると彼方を見透かした。 「うっすらお陽さん出てきた、もうあがるな。さあ働こか」 まだ空を覆う厚い雲の切れ間からまるで天上で神々があてたスポットライトのような光 が村に注いでいる。もうまもなく撮影も再開されるだろう。 ![]() ぽてぽて歩き出す城島の背中が動き出してから我に返る。 「リーダーはやっぱりリーダーっすね……俺一生(TOKIO)つけてもらいます!」 一生TOKIOでいる気満々ですから!そう言い残してダッシュで城島の元へ駆けて行 く長瀬。じゃれついてじゃれつかれてどちらも自然な笑顔。 「だてに年はくってないって?」 自分には手に余った長瀬のモヤモヤを軽やかに晴らしていった手腕に唸る。 「なんなの?なんなの?あの決め目線っっ?!今頃になって俺すげえ突っ込みたくなっ てきた。でもあれでシラフなんて嘘でしょ?絶対ポケットとかにジャックダニエル仕込 んでるって」 実は城島のあの手の台詞が大好物な男は目をキラキラさせて。 井戸の手前で振り返って手招きするさそり座O型コンビに向け国分と松岡が歩き出す。 「いつもながら鮮やかだねぇー。しかし、言霊か…古風だね貴方も。なら俺も俺の呼び 方でそのやり方に乗らせてもらおうかな。俺は一生『TOKIO』からも『シゲ』から も離れるつもりはないからね」 雨上がりの柔らかな光に照らされて最後尾をのんびり歩きながら山口が呟いた。 end. end. ***** なぜ書きたい方向と違う方向に話が進むんだろう・・・。 ずっとずっと呼び続けますよ。という話でした。さらに『シゲ』呼びの頻度が上がりそうです、山口さん(笑) どうにか祝えてるでしょうか(恐る恐る) 祝11周年!! より充実した一年でありますように。 お読み下さってありがとうございました!できれば拍手で感想等一言でも頂けると嬉しいです。 top.
|