present J→K


2007年9月2日、俺のWEBの日記本の発売記念イベントはなんとか無事終了した。

「あー、終わった〜」

「お疲れ様でした」

控え室に帰り私服に着替えてソファーに座った途端に思わず漏れた第一声。

「ふあ〜。でもほんと嬉しいね。誕生日をみんなちゃんと覚えててくれて」

「ですね」

緊張から解放されて大あくびな俺を見てマネージャーがくすくす笑ってる。

「ファンのみなさんに直接祝ってもらえるイベントが去年に続いて今年も、ですからね…やっぱり
強い星の下に生まれてますよねぇ太一さん」

「去年?」

去年?去年…あぁ、GIGs。

「あれからもう一年かぁ」

去年の俺の誕生日は東京でのGIGsの初日だった。

メンバーやスタッフやファンの子からの様々な形での祝福、おまけで登場したモンロー風金髪美女
な松岡、巨大なケーキ、リーダーのチョーカーで踊ってた『HAPPY BIRTHDAY TAICHI』の電
光の文字、ライブハウス特有の距離感、いつものホールツアーとはちょっと質の違った高揚に浸る
みんなの笑顔。

今年の春先にいつものようにはライブがなかったからかそれは今となってはなんだか宝物めいた
きらきらした記憶で。

「あぁ、思い切り音楽してぇなあ」


8月に出た新曲のプロモーションやプレミアム以外、プライベートでいったいもうどれくらいきちんと
キーボードに触ってないんだろう。
言っても仕方ないから、と普段は心の隅に押し込めてる言葉、偽らざる本心…それがぽろりと零れた。

 

 

 

コンコン、不意にノックの音。

「?…どぉぞ〜」

記憶に気を取られたまんまの俺の答え。

それに呼応するように顔を出したのはリーダーだった。

「リーダー?!」

「お疲れさん、太一えらい盛況やったらしいやん」

ほわほわした笑顔に労われる。

「どーしたのさ」

「いやこの近くまで仕事で来てたから…なあ太一この後ちょっとだけ時間ある?」

なぜかちょっと上目遣いで窺うように俺を見るリーダー。

珍しい、天変地異の前触れかなんかなんだろうか?…そんな顔したって俺は山口くんや松岡じゃねぇん
だし効果ねぇよ、そうつっこもうかと思ったけどまあ滅多にない誘いだけにそれはやめておいた。

今日が多忙なのを見越してか誕生祝いのパーティーとか結構前倒しでやってもらってたからこの後は差
し迫っての予定もない、スタッフと飲みに行こうかと思ってたくらいで。

そう言えばリーダーからの『誕生祝い』ってまだもらってないし大方考えつかなくて『飯奢ってチャラ』とか
思ってるんだろう。

「いいよ」

昔ならいざ知らず今はもうこの人と飯とか言われてもびくつくこともない。

「よっしゃ、なら」

マネに確認し後事を託したリーダーはせかせか待ち切れないみたいに俺をせかした。

 

で。

飯、かと思ってた俺があれよあれよと言う間にタクシーに押し込まれて連れてこられたのは。

 

「スタジオ?」

「そう、めっちゃプチサイズやけどな」

「…」

そこは普通のマンションの中なんだけど床とか壁とか結構本格的な防音仕様で。真ん中にコンソールブース
を挟んで10畳くらいのサイズのスタジオが二つ。

その片方には楽譜とかギターとか置かれてカスタマイズされてる。
そしてもう片方には…部屋の真ん中所在なさげに置かれてる俺がライブで使うのと同じタイプのキーボード。

「ジブンしばらく前に言うてたやんか、時間気にせんと思い切り音出して弾きたいて」

やから。

これがボクからのプレゼント、おっちゃんの隠れ家半分提供したるわ。ここやったら一通りの録音機材もある
からデモテくらい作れるしいつ音出しても大丈夫やから。

 

リーダーの言葉が耳から脳に届くまで数分、そしてその意味を理解できるまでさらに数分。

 

「ぇ、いいの?ここ使って…ほんと?マジ?」

俺の声はみっともないくらいうわずってたかもしれない…だけど今はそんなことに構っちゃいられなかった。

「ええよ、足らんかったら楽器持ち込んでも構わへんから思い切り使い…その代わりボクがうなるぐらいの曲書
いて聞かせてや?ぞろ目の誕生日おめでとぉ」

 

メンバー…特にこの人はほんと侮れない。俺がいつ呟いたか忘れたような言葉からこんな展開を持ってくる
から…。

 

いったいいつからとか他のメンバーは知ってるのかとか、なんで今回いきなり教えてくれる気になったのかとか
つっこみたいことは山積みだけど…。
俺はまるで呼ばれたようにふらふらとキーボードに歩み寄った。

「猫にかつぶし、国分太一にキーボード、やな」

夢中で鍵盤の感触を確かめる俺を見ながらリーダーがくすりと笑った。

 

 

*****

 
太さん、ぞろ目のお誕生日おめでとうございます。ますます男前に磨きをかけてくださいv

その共同隠れ家がメンバーに露見したら一騒動は必至ですが(苦笑)
ちなみに『一の主スタジオ』と名付けられています…もちろん城島さんによって。っていうかそのネーミング
を使いたいが為に太一さんを引きずり込んだという噂も;
PARKING作者の鶴ちゃんよっすぃーの『KAM』コンビに紹介してもらったミニスタジオ、道楽で持ってるオーナー
の意向で認められた腕の持ち主には破格の料金だそうです。いったいどんな裏設定だ…。

このふたりだとどうしても音楽を絡ませたくなる病にかかっています…。



お読み頂きありがとうございました。よければつっこみ等拍手から入れていってください。





































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