19年。

『俺らコンビ歴19年ですから』

そのOAをたまたまリアルタイムで見てた俺はその言葉のもたらした衝撃に思わずムッと口を尖らせた。

画面には荒く削った木の塊からお椀をろくろで削り出してる兄ぃとリーダーの姿。
そいでもって俺が頭をガツンとぶん殴られたのはもともとは夫婦でやってた役割分担だそうなその作業をふたりして引き受けた時の兄ぃのセリフ。

真剣に互いの呼吸を計っての共同作業はその言葉が嘘じゃないのを証明するかのように画面に映るその何倍もの時間を費やして身につけたと見てわかる技術でふたり椀を作り上げてく。
最初の一つと最後のの出来栄えは素人な俺にもわかるくらいの差。そこにはたしかに『コンビ歴19年』の絆がある…のかも知れないけど、それは百歩いや一万歩譲って認めてもいいけどさ、それにしたって…。

「『コンビ』ってなによ…コンビって」

グループとしてだって出来上がってもう16、7年経つし、TOKIO歴でいいじゃん…。

もしかして今もあのふたりの認識はリィダァと兄ぃの基本の【2】に俺ら【+3】のユニット編成だとか言わないよね?まさか。

そんな考えるのも空恐ろしい結論にたどり着いちまいそうになってそれを脳裏から振り払うように俺はブンブンかぶりを振った。



***



『俺らコンビ歴19年ですから』

帰宅途中ミリ単位でしか進まないくらいの渋滞にはまって車載のテレビで見るともなしに自分たちの番組を眺めてた俺は山口くんの言葉にため息をついた。

「あーあ、これでまたあいつがいじけてうるさくなんじゃん…」

自分達の番組は時間の許す限りオンタイムで見るというメンバー大好き、特に頼りがいあるTOKIOの保健室な彼を『兄ぃ』と慕い、最年長なあの人のどんなささいなボケも必ず拾って超光速のツッコミを入れることを自分の存在理由だと思い込んでいる節のあるあいつ。リーダーの老後の面倒は俺が!と今からもうすでに意気込んで公言してるリーダー馬鹿なあいつ、松岡が。

「長瀬はもし見てても『やっぱりリーダーがお母さんでぐっさんがお父さんすよねぇ』くらいしか言わねぇだろうけどなぁ……ライブ前でそれでなくともみんなテンションの上下幅がデカい時期だってのに」

俺しかいない車内、聞く人間もいないから気兼ねなく独り言。

それにしても、とふと気づいて首を傾げる。

「『19年』って言ったよね。迷いもなく言い切ったけど、よく覚えてたっつうかちゃんときっちり数えてるもんだなあ」

あらかじめ計算でもしとかなきゃパッと、それもあんな半端な数字なんて出て来やしない。バックで踊ってた時代の振付も覚えてると豪語する松岡ならなんとかなるかもだけど少なくとも俺や長瀬なんか絶対無理だ。

記憶を辿って思い返す。

「山口くんが事務所に入ってリーダーと出会って活動しだしたって……俺が入ってしばらくしてからだよな。
ええと俺がまだ中坊ん時だから………………87…いや……88年くらい、か。
そいで今は2008年だから…」

たしかに計算は合うんだけど。

「けどやっぱり細かいよなぁ」

俺ならもし山口くんの立場だったとしても『20年近い付き合い』なんて表現すんのがたぶんせいぜいだ。5人の中で一番細かいところなんてすっ飛ばしそうに見えるのにね。大らかさイコール大雑把さ、って感じに。
まあ外見と裏腹な部分なんて誰にでもあるし意外と小心で慎重派だったりするそっちも俺らはわかってるけど。

傍らに映ったコンビの片割れはその言葉に対してなにも言わず彼を形づくる特徴的な笑顔でただふわふわほわほわ笑ってるだけだった…でもその言葉や数字に驚いてる風でもないってことはその『コンビ』表現とか『19年』はあんたらの共通認識ってことなんだ。

はぁ…。

「まさか『今日で19年、イエーィ』『早いなぁ、もう19年かぁ』なんて出会った記念日とかふたりして祝ったりしてねぇだろうなぁ」

画面は移って後半企画、冬の北海道をのほほんと愉しげに観光バスで移動するリーダーをひたすら馬ソリで追いかける山口くん。
互いを気遣いながらもあと一歩ってとこですれ違い続けた(?)挙げ句にやっと巡り会えて、ラスト並んで温泉につかるまったり感満載の画を眺めながら思わず呟いた独り言の光景を想像してしまって俺は背筋を震わせた。

「ほんとにやってそうな『突き抜けた感』があるから参るんだよなぁ…」

めちゃめちゃ忙しいそれぞれのリアル、そんなに接点があるとは思えないのにどうやってあの空気を生み出すんだろう…考え込みそうになって後続車のクラクションで我に返る。

やべ、考え事して事故ってどうするよ俺…しかも自分のこと考えてじゃなく。

のろのろ車を進めながら明日の通しリハを思い描く。
落ち込みの裏返しでぎゃあぎゃあいつもにも増してあのふたりに対して『こっち見て』アピールに懸命だろう弟分と、それをいつものことと受け流して『いったい村の縁側か!ここは』とつっこみたくなるのんびりのどかなくつろいだ空気を生み出す上ふたり(仕事してたらOAを実際リアルタイムで見てるかも微妙だし)。そしてそんな空気を気にすることなくむしゃむしゃ差し入れを食いつつギターに没頭する『超』がつくほどマイペースなあいつ。

「……でもこれってそういやライブ前にはよくある風景だったっけ」

そんなことも思い出す。久々帰ってくるもうひとつの日常、俺たちの基本形。

「そりゃみんな多少いつもと違うテンションなのもしょうがねぇか」

くるっとプチサイズだってライブはライブ。
毎回この時期は一番落ち着かなくて一番ワクワクして。そして俺らが俺ら、そしてバンドであることを実感する。今回は『サプライズ』付きだしね、特に。

「でも一応釘だけは差しとこうかな」

ソロパートのメロディーを口ずさみハンドルに指で軽くリズムを刻む俺は自分もまた浮かれていることにはまったく気付かないままそう呟いてようやく流れ出した高速に車を走らせた。



                           end.

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お分かりだと思いますが2月24日放送なDの『コンビ歴19年』発言を受けての妄想です。いったいいつの話やねん!とセルフ突っ込み済みです。

少なくともライブ開始までにはUPしておくべきだったよねぇ…と凹みつつ。

お付き合いいただきありがとうございました!

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